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第113話

先輩は俺を見上げて、小指をキュッと握る。 可愛すぎでは…? 上目遣いヤバいよ……。 勢いよく先輩を抱きしめる。 「可愛いっ!今日は抱きしめて眠っていいですか?」 「……いいよ。」 いいのっ?! 俺の腕の中で幸せそうに微笑む先輩。 はぁ…。可愛い……。 「先輩、大好きっ!!!」 「わぁっ!?」 「前言撤回とか許しませんからね!今日は一緒に寝るんですから!」 「…うんっ。」 桃色に染まる先輩の頬。 夢じゃないんだよな…? 先輩を抱きしめながら、時々片手で自分の頬をつねる。 痛ぇ…。 まさかマゾでもない俺が、痛いことを嬉しいと思う日がくるなんて。 先輩を何度も抱きしめていると、先輩のお腹がぐぅ〜っと鳴る。 「夕食作るね。」 「うん。ありがと。」 しばらくゼリーくらいしか食べてなかった先輩の胃がびっくりしないように、メニューはお粥にする。 先輩の気に入ってくれた卵粥。 「お粥?」 「うん。消化にいいものじゃないと、先輩の胃がびっくりしちゃうでしょ?」 「そっか。俺、城崎の作ってくれる卵粥好き。」 「知ってる。たっぷり卵入れますね。」 先輩はキッチンに立つ俺の周りをウロウロしている。 後ろからハグしてくるわけでもなく…。 可愛いけど……。 「先輩…?」 「ん?」 「包丁使うから、ちょっと離れててね?」 「…っ!子どもじゃないぞ、俺は!」 先輩はぷりぷりと怒った。 なぁ…、もしかして、これって……。 「知ってますよ。あー…、料理する前に先輩のこと抱きしめたいな…?」 「…!い、いいよ?仕方ないから抱きしめさせてやる…。」 「やったー♡」 やっぱり!! 天邪鬼発動してる…!! ぎゅーっと先輩をもう一度抱きしめて、髪の毛にたくさんキスを落として、満足いくまで幸せをもらってから腕を解く。 解放された先輩は逃げるようにソファへ行ってしまった。 俺はさっさとお粥を作ってダイニングテーブルに持っていく。 「食べられそう?」 「うん。美味しい。」 「よかったぁ…。」 先輩はお粥を食べて幸せそうに表情を緩める。 かーわーいーいー……。 ご飯中なので抱きしめたい気持ちを抑える。 ヤバいよ。ずっと先輩を抱きしめて過ごしたい…。 「お風呂終わったら、俺の部屋きてね…。」 「すっげー誘い文句…。」 「へ?」 「ううん。なんでもない。すぐ行きますね。」 お粥を食べ終わった先輩は先にお風呂に入った。 先輩が上がったのを確認してから、俺も風呂に入り、夜は先輩を抱きしめて布団に入った。 気持ちよさそうにすやすや眠る先輩を見て安心して、俺もぐっすりと眠ることができた。

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