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第115話
仕事帰りに透さんの家に寄る。
相変わらずすげぇな、ここ…。
「え、ここ?」
「はい。45階だったかな。」
「?!」
普通ビビるよなぁ。
タワマンに住んでる知り合いなんて、透さんくらいだ。
エントランスに入り、コンシェルジュに名前と用件を伝える。
しばらくすると中へ通され、エレベーターに乗り込んだ。
そわそわと落ち着かない先輩が可愛い。
手を繋ぐと、少し安心したような顔になる。
45階に着き、透さんの部屋のインターホンを押した。
「いらっしゃ〜い!」
「圭さん、こんばんは。昨日はありがとうございました。」
「ご迷惑おかけしてすみませんでした。ありがとうございました。」
「えへへ〜。もっちーさん、元気そうでよかった!中にどうぞ?」
圭さんが出迎えてくれて、部屋の中に通される。
すげー良い匂いするんだけど。
「透さんは?」
「透はまだ仕事だよ〜。多分もうすぐ帰ってくると思うけど。」
「倉科さんが帰ってきたら、挨拶して帰るね。」
「え〜〜。なんでー!一緒にご飯食べよーよ!」
先輩は圭さんのおねだりに困っていた。
俺もこの甘ったるい愛の巣に長居する気はない。
「圭さん、本当に帰ります。俺も早く帰って先輩のこと甘やかしたいし。」
「はっ?!」
「じゃあ早く帰らせてあげないとだねぇ〜。」
圭さんはニマニマして俺を見た。
甘やかすって、抱きしめるくらいしか今はできないけどさ…。
「ただいま。」
「あ!透〜っ!」
圭さんはパタパタとスリッパを鳴らしながら玄関に走っていった。
それから5分後、リビングに透さんと顔を真っ赤にした圭さんが帰ってきた。
その表情を見れば何があったかなんて、なんとなく想像がつく。
先輩もつられて顔を真っ赤にしていた。
「望月さん、体調は大丈夫ですか?」
「え、あ…、はい…。ご迷惑おかけしました。」
「いえ、ご無事で何よりです。」
透さん、余所行きの顔してるな。
まぁこの人、表の顔も裏の顔もどっちもモテるには変わらないんだけど。
「透さん、これ先輩と俺から。昨日は本当にありがとうございました。」
「わざわざいいのに。望月さんもありがとうございます。」
「いえっ、そんな…。大したものじゃなくてすみません。」
紙袋を手渡すと、透さんは受け取ってすぐに圭さんに渡した。
多分お菓子の類だとすぐに分かったからだ。
ていうか、タワマンの圧なのか、透さんの圧なのか、先輩の体がずっと強張ってる。
早く家に帰って、緊張解いてあげたいな…。
「じゃあ俺たち、もう帰りますね。」
「あぁ、気をつけてな。」
「お邪魔しました。」
「望月さん、圭が喜ぶから、また来てやってください。」
「はい。本当にありがとうございました。」
先輩の肩を抱いて、透さん家を後にする。
タワマンの敷地から出ると、先輩は「はぁ〜……」と大きくため息を吐いた。
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