119 / 242

第119話

診察が始まり、先輩は先生にこっぴどく叱られていた。 時計を見てるけど、かれこれ10分は同じことを繰り返し言われてる。 先輩のメンタルがこれでダメになることはないのか?先生よ。 止めるべきなのか…? 「まぁお叱りはこれくらいにして…。」 「「ふぅ…。」」 「こら。望月さん。」 「すみませんでした。」 先輩と同時に息を吐くと、先輩だけ先生に怒られた。 「嘘です。もう楽にしていいですよ。」 「………」 先生は説教モードを解いて、柔らかい雰囲気に戻っていたけど、先輩はまだ緊張していた。 「最近はどうですか?」 「調子いいです。」 「城崎さんから見ていかがですか?」 先生は俺に尋ねた。 今日俺も来たのは、先輩の主観的な気持ちだけじゃなく、客観的に見てどうかも分かるようにってことかな。 「はい。俺から見ても、先輩元気になってきたと思います。毎日可愛い笑顔が見れて、俺は幸せです。」 「ちょっと…!何言ってんだよ?!」 「え〜?事実だけ述べてますよ?」 先輩は慌てて俺の口を押さえる。 先生は笑いながら、ノートにさらさらと記録を残す。 「身体の震えや過呼吸も止まってるみたいで良かったです。お薬減らしましょうか。」 「はい。大丈夫だと思います。」 「城崎さん、望月さんの体調と薬の管理はお願いしますね。」 「任せてください。」 先生公認って誇らしいな。 身の回りの世話も体調管理も全て、俺が完璧にやりきってみせる。 「望月さんは不安なことがあったらすぐに相談すること。城崎さんでもいいですし、もちろんこちらに受診してくださってもかまいません。くれぐれも一人で溜め込まないように。」 「…………」 「返事は?」 「はい…。」 何で無言だったんだよ。 また一人で溜め込もうとしてたのか? 本当心配が絶えないな、この人……。 「先輩、ちゃんと話してくださいね?」 「……善処する。」 「ダメ!約束してくださいっ!」 善処って…。 絶対話してほしいのに。 俺の嫌なところだったらすぐに直すし、俺の周りのことだったら早急に対処する。 抱え込まれたら本当に分からないから、また気づいてからでは遅いってことになりかねない。 「まぁ無理強いは良くないですけど、望月さん、本当に抱えちゃダメですよ?」 先生が念押ししても、先輩ははっきりとした返事をしなかった。

ともだちにシェアしよう!