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第120話
先生は諦めて、俺に伝える。
「城崎さん、少しでも望月さんの様子がおかしかったらすぐに連絡してくださいね。」
「はい。」
「じゃあ今日の診察は以上になります。」
「あ。待ってください、先生。少しだけ二人で話したいです。」
え?
診察室を出ようとすると、先輩は椅子に座ったままそう言った。
「いいですよ。では、城崎さんは先に待合でお待ち頂けますか?」
「はい…。」
俺なしでしたい話って何だ…?
居座りたいけど、多分それは先生も許してくれない。
渋々診察室を後にし、待合に座った。
5分しても出てこない。
も〜…、何の話してるんだ、本当に。
泣いて出てきたら許さない。
「望月綾人さ〜ん。」
「あ。すみません。支払いですか?」
「あら?望月さんご本人は?」
「まだ先生と話してます。支払いなら俺がするので。」
「かしこまりました。」
支払いを済ませ、もう一度待合に座る。
診察を終えて10分が経過。
俺の我慢も限界にきそうなところで、先輩が診察室から出てきた。
「遅い…!」
「ご、ごめん…。」
「何の話?治療以外の話だったら怒る。」
先輩を抱きしめて尋ねると、先輩はくすくす笑った。
もう…!俺は心配してるのに!
「大した話してないよ?」
「じゃあ俺いても良かったじゃないですか!」
「恥ずかしいもん、城崎いたら。」
頬を桃色に染めて微笑まれたら、嫉妬心が浄化された。
俺がいたら照れちゃう話してたってこと?
「何その可愛い理由…。ずるいです…。」
「許して?な?」
「今回だけですよ…。」
「はいはい。じゃあ支払いしてくるから待ってて。」
受付に行こうとする先輩の手を掴む。
「支払いは済ませました。」
「へ?」
「だから帰ろ?」
クリニックから出ると、先輩が何度も同じことを俺に言い続けた。
「治療費は俺が出すって!俺が通ってるんだから!」
「もう10秒前に聞いた。いいの。」
「治療費まで払わせる理由無いから!」
「ある。元はと言えば馬鹿な過去の俺が発端でしょ。」
「なぁ、本当に俺が出すって!」
「受け取りません。」
押し問答が繰り広げられていたが、最後には先輩が折れた。
まぁ結局、「ランチは俺が出す。」と譲らなくて、先輩に奢ってもらう形になったんだけど。
それなら治療費出してもらった方が安かったのでは?と思ったけど、先輩は多分そんなこと全く気にしてないんだろうな…。
最近人気の店で韓国料理を食べて、帰路についた。
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