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第121話
受診して薬が減らされてからも、先輩の顔色がいい日は続いた。
以前と変わらぬくらい食事も取っているし、夜も俺の腕の中で気持ちよさそうに眠っている。
キスの代わりにハグ。
そんな毎日にも慣れてきて、俺の下心が暴走することも減ってきた気がする。
前までならキスしたすぎて悶えてたし、すぐにアソコが反応しかけてたけど。
プラトニックで穏やかな日々も悪くない。
でも、俺も20代の健常な男なわけで…。
一緒にベッドにいると、やっぱり少しくらいは欲しくなってしまう。
「先輩…」
「ん〜?」
「一つ提案してもいいですか…?」
「うん?何?」
先輩が俺に抱きしめられながら見上げてくる。
上目遣い…、可愛い……。
「あの…ですね……」
「うん。」
「先輩が嫌でなければでいいんですけど……。」
「うん?」
「キス……してもいいですか…?」
「へ??」
先輩はキョトンとした顔をした。
嫌ではなさそう…?
先輩だってキスしたい時の癖出てるくらいだもんな。
あ、でも困った顔してる…。
「あの…っ、もちろんいきなり唇に…とかは考えてなくて!」
「??」
「手とか足とか、ほっぺとか!ほら、あの外国人がする挨拶みたいな程度の!それくらいからさせて頂いて!…で、いつから唇にできたらなぁ…なんて……。」
先輩は黙ってしまった。
うわああぁぁ、やらかした??
最後の方焦って、自分でも何言ってるか分かんなかったし…。
恥ずかしすぎて穴があったら入りたい…。
「………ぃょ…」
「へ…?」
「……いいよ。」
「いいんですかっ?!」
先輩の肩を掴んで揺さぶると、先輩はくすくす笑った。
ハッとなって肩から手を離す。
「ふふっ。城崎、プレゼンみたいに言うじゃん…(笑)」
「プレゼンでこんなに緊張したの、初めてかもしれません…。」
「ふはっ!も〜…、かわいいな、城崎……。」
髪をくしゃくしゃ撫でられて、胸がきゅぅっとなる。
俺、先輩のことめちゃくちゃ好きだなぁ…。
「さっそくいいですか?」
「へ?」
「手、出してください。」
「は、はい…。」
先輩はおずおずと手を差し出し、俺は先輩の左手を両手で包み、優しく撫でた。
手の甲に、唇を当てる。
「…っ」
「愛してます。大好き、先輩…」
夢中で何度もキスしていると、気づいた頃には先輩の顔はのぼせたみたいに真っ赤になっていた。
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