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第123話

「そうだ、先輩。今週末の予定は?」 話題を変えて雰囲気を戻す。 今週は納涼会。 去年だって楽しんでたし、あのガキンチョ二人が先輩のこと楽しみにしてるだろうしな。 あのときはすっげぇ嫉妬したけど…。 先輩ってば、鈴香ちゃんと変な約束するし。 ほんと焦ったんだからな…。 なんて、去年の納涼会を思い出していると、先輩は言いづらそうに口を開いた。 「あ…、えっとね、土曜日に病院行ってから、実家帰る。」 「納涼会は?」 「今年は欠席する。城崎は楽しんできて?」 ま、まじか……。 先輩行かないんだ…。 先輩がいない社内イベントとか、何を楽しめばいいんだよ? 行く意義が思いつかねぇ…。 「えー。俺は先輩いないと行きませんよ。」 「なんでだよ?せっかくなんだから、俺以外ともちゃんと交流深めろって。」 「やだ。先輩が欠席するって分かってる行事に行くわけないでしょ。」 「でも、一年目の頃は、俺が風邪で欠席した時とか出席してたんだろ?」 「なんで知ってるんですか…。」 先輩の言う通り、一年目の時は迷わず全部出席してた。 何故なら先輩に会いたいから。 どの行事、どの飲み会に先輩が来るか分からないし、先輩とプライベートなお付き合いなんてなかったし、そりゃ俺だって必死に参加した。 先輩が休みだと分かった瞬間に帰ることだってあったし。 説明すると、先輩は納得したように笑っていた。 「じゃあ俺の分までみんなの手伝いしてきてよ。」 「無理。クリニック一緒に行くし。」 「終わってから向かえばいいじゃん。間に合うだろ?」 先輩の予約時間は、病院開いてすぐだったと思う。 だから9時半か。 診察は一時間あれば終わるから、まぁ間に合うには間に合う。 でもそのあと先輩は実家に帰るんだよな? 「む〜…。とにかくやだ。」 「だーめ。命令です。」 「やだーーー。」 大体先輩以外に話したい人いないし。 先輩には悪いけど、先輩がいない納涼会なんかに行ってる暇あったら、家で先輩のためにできることがいろいろあると思うし。 そう思っていたら、先輩ははぁ…とため息を吐いた。 「ご褒美あげるから。」 「えっ!?」 「納涼会行ったら、一つだけわがまま聞いてあげる。」 まさかすぎて声が出た。 嘘?ご褒美あり?? 「なんでも聞いてくれる??」 「……可能な範囲でな。」 「じゃあ行く!行きます!」 俺は手を上げてデカい声で返事した。 何お願いしよう?! 「優しいわがままで頼む…。」 「え〜?どうしようかなー?」 「心の準備したいから今言って?」 「だめ〜。納涼会中にじっくり考えておきます♡」 「えぇ…?」 先輩は困り顔でそう言った。 優しいワガママってなんだよ、可愛いなぁ。 うわ〜。何にしようかな? 「ちゃんと手伝いしてるかどうか、涼真に監視してもらうからな。」 「じゃあサボれないですね〜。」 「そうだよ。ちゃんと楽しんでくるんだぞ?」 「はーい。」 柳津さんの監視付きってわけね。 まぁ余裕よ、余裕。 大体、先輩いないなら手伝いでも何でもして時間潰したほうがいいし。 ご褒美が嬉しすぎて、俺は鼻唄なんか口ずさみながら、先輩の髪を掬い何度もキスを繰り返した。

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