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第125話
「じゃあ俺は実家に帰るから。城崎は納涼会楽しんでくるんだぞ。」
駅に着いて、先輩は改札を通る。
「はーい。帰り、駅までお迎え行きますね。」
「着いたら連絡はするけど、迎えは大丈夫。」
「行きますって。」
先輩がトラウマを発動しないように、駅から家までの道を一緒に歩くようになったわけだけど、正直俺だってトラウマだ。
もし、また先輩が帰ってきてくれなかったら…?
そう思うと、震えるほど怖い。
だから、先輩のためだけじゃなくて、俺のためでもあるんだけど…。
「気持ちだけで十分だよ。じゃあ、また夜に。」
「はい…。気をつけて行ってきてくださいね。」
先輩は手を振って、ホームへ行ってしまった。
姿が見えなくなったけど、電車が出るまで見送る。
今離れたばかりなのに、もう会いたい…。
「おーい、城崎。」
「………なんですか。」
「なんでそんなに不機嫌なんだよ?せっかく迎えにきてやったのに。」
どんどん小さくなっていく電車を見つめていると、後ろから声をかけられる。
振り向くと、そこには柳津さんが立っていた。
「綾人におまえのこと任されてっから。」
「見張られなくても、先輩と約束したんだからちゃんと手伝いますよ。ていうか、車持ってたんですか?」
「いや、レンタカー。お前も半分出せよ。」
「わー。パワハラだー。」
「嘘嘘。ほら、いくぞ。」
仕方なく柳津さんの運転する車に乗り、集合場所へ向かう。
場所は去年と同じ。
もう男性陣は何人か着いているらしく、先に準備しているらしい。
「出遅れたな〜。」
「仕方ないでしょ。先輩の受診一緒に行きたかったんです。」
「それは行ってやって。綾人、最近ほんとに顔色良いからさ。すげー安心してんの。」
「俺もです。」
「でもお前ばっかで、俺に構ってくれなくなった。」
「それは恋人の特権なんで。許してください。」
朝一緒に来て、昼休みも一緒で、仕事もどちらかに残務があれば手伝って一緒に帰る。
以前と変わらぬイチャイチャっぷりも戻ってきてるわけだ。
はぁ…、今日は先輩のどこにキスさせてもらおうかな…?
個人的には背中とかお腹とか、そろそろ感じやすい部分を…と思ってるけど、服を捲るのはアウトなのか?
つーか、もし先輩がエッチな声出したら、俺自身暴走してしまいそうで怖いけど…。
「足りねぇ〜……。」
「おいおい。親友のシモ事情は聞きたくねぇよ?」
「キスですよ、キス…。」
「へぇ。綾人、キスも大丈夫なんだ?」
「口にはまだですけど…。今は俺のキスに慣れてもらうために、唇以外のところにさせてもらってるんです。すげー健全なとこにばっか。でも、もっと先輩が欲しくて…。お腹とか、ダメですかね…?」
柳津さんなんかにこんな相談する日がくるなんて…。
ちょっとばかり屈辱だ。
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