126 / 242
第126話
はぐらかされるかなと思ったけど、柳津さんはちゃんと答えてくれた。
「いいんじゃね?」
「いいと思います…?」
「綾人に聞けばいいじゃん。もっと触れたいってアピれば?」
「引かれないですかね…。」
「引かねえだろ。綾人も割とそういうの好きなタイプだし。」
そういうのとは?
問いただしたくなったけど、嫉妬して先輩に嫌われるようなことする自分が目に見えて、聞くのをやめた。
「お。見えてきた。着くぞ。」
山道を通り、やっと目的地に辿り着いた。
男性陣は俺たちが最後……ではなさそうだ。
「おー、柳津、城崎。休みなのにお疲れ様。」
「おはようございます。」
「ちゅん坊は一緒じゃないのか?」
「あいつは自分の車で来ると思いますよ。」
「そういえば、去年も目立つ車走らせてきてたなぁ。」
先輩と柳津さんより上の上司。
所謂、課長や係長とかあのあたり。
部長や次長はちゅんちゅんのことを雀田って言うけど、課長たちは愛を込めて"ちゅん坊"と呼んでいる。
「今日は望月来られなくて残念だなぁ。久米さんとこのお子さんも、毎年望月目当てなのに。」
「城崎もいつも望月目当てだろ?ははは。あいつ、いい歳して女にモテなくて男と子どもにモテるって…。結婚は遠いか?」
「でも、サキちゃんはどうなったんだろうな?柳津何か知ってるか?」
「あ〜……、うまくいってるみたいっすよ。」
次長と課長に聞かれ、柳津さんは困ったように俺に目線を寄越して、そう答えた。
先輩はモテなくていいんだよ。
俺だけの先輩なんだから!!
「ところで課長、準備って何手伝えばいいですか?」
「あー、あっちでテント建ててるんだ。手伝ってきてくれるか?」
「了解です。行くぞ、城崎。」
「はーい。」
柳津さんについていき、川から少し離れた場所にテントを立ててるみんなと合流した。
俺と柳津さんが到着してから30分。
ぞろぞろと女性陣も到着し始める。
「綾人〜!綾人は??」
「おー。鈴香ちゃん、こんにちは。」
「りょーま!綾人はどこー?」
久米さんの手を離して一番に駆け寄ってきたのは、先輩のお嫁さん立候補者の鈴香ちゃん。
俺の恋敵 だ…。
「綾人は今日いないよ。」
「え〜っ?!なんでー!!」
「どうしても外せない予定があるんだって。今日は俺と遊んでくれる?」
「やだー!!綾人がいい!!!」
「うっ……。地味に傷つくんですけど…。」
鈴香ちゃんは柳津さんをこっぴどく振り、久米さんに泣きついた。
久米さんも困った顔をしている。
「鈴香、仕方ないでしょう?」
「わーん!綾人がいないなら帰るー!!」
「鈴香……。もう、困ったわね…。」
ギャンギャン泣き始めた鈴香ちゃんを、みんながお菓子やおもちゃを持ってきて宥めはじめた。
ともだちにシェアしよう!