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第126話

はぐらかされるかなと思ったけど、柳津さんはちゃんと答えてくれた。 「いいんじゃね?」 「いいと思います…?」 「綾人に聞けばいいじゃん。もっと触れたいってアピれば?」 「引かれないですかね…。」 「引かねえだろ。綾人も割とそういうの好きなタイプだし。」 そういうのとは? 問いただしたくなったけど、嫉妬して先輩に嫌われるようなことする自分が目に見えて、聞くのをやめた。 「お。見えてきた。着くぞ。」 山道を通り、やっと目的地に辿り着いた。 男性陣は俺たちが最後……ではなさそうだ。 「おー、柳津、城崎。休みなのにお疲れ様。」 「おはようございます。」 「ちゅん坊は一緒じゃないのか?」 「あいつは自分の車で来ると思いますよ。」 「そういえば、去年も目立つ車走らせてきてたなぁ。」 先輩と柳津さんより上の上司。 所謂、課長や係長とかあのあたり。 部長や次長はちゅんちゅんのことを雀田って言うけど、課長たちは愛を込めて"ちゅん坊"と呼んでいる。 「今日は望月来られなくて残念だなぁ。久米さんとこのお子さんも、毎年望月目当てなのに。」 「城崎もいつも望月目当てだろ?ははは。あいつ、いい歳して女にモテなくて男と子どもにモテるって…。結婚は遠いか?」 「でも、サキちゃんはどうなったんだろうな?柳津何か知ってるか?」 「あ〜……、うまくいってるみたいっすよ。」 次長と課長に聞かれ、柳津さんは困ったように俺に目線を寄越して、そう答えた。 先輩はモテなくていいんだよ。 俺だけの先輩なんだから!! 「ところで課長、準備って何手伝えばいいですか?」 「あー、あっちでテント建ててるんだ。手伝ってきてくれるか?」 「了解です。行くぞ、城崎。」 「はーい。」 柳津さんについていき、川から少し離れた場所にテントを立ててるみんなと合流した。 俺と柳津さんが到着してから30分。 ぞろぞろと女性陣も到着し始める。 「綾人〜!綾人は??」 「おー。鈴香ちゃん、こんにちは。」 「りょーま!綾人はどこー?」 久米さんの手を離して一番に駆け寄ってきたのは、先輩のお嫁さん立候補者の鈴香ちゃん。 俺の恋敵(こいがたき)だ…。 「綾人は今日いないよ。」 「え〜っ?!なんでー!!」 「どうしても外せない予定があるんだって。今日は俺と遊んでくれる?」 「やだー!!綾人がいい!!!」 「うっ……。地味に傷つくんですけど…。」 鈴香ちゃんは柳津さんをこっぴどく振り、久米さんに泣きついた。 久米さんも困った顔をしている。 「鈴香、仕方ないでしょう?」 「わーん!綾人がいないなら帰るー!!」 「鈴香……。もう、困ったわね…。」 ギャンギャン泣き始めた鈴香ちゃんを、みんながお菓子やおもちゃを持ってきて宥めはじめた。

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