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第130話

19時になっても連絡が来なくて、とうとう心配になってくる。 せめて実家いつ出たかさえ分かれば……。 もしかして事故ったとか…。 時計を見ながらソワソワしていると、ガチャ…と玄関から音がした。 「ただいま〜。」 「先輩っ?!連絡は??」 「あ。忘れてた。」 玄関に飛んでいくと、ニコニコした先輩がいた。 俺は先輩の頬や肩、腰、いろんなところを触って無事を確認する。 「大丈夫?息苦しさとかない?震えは?」 一人であの道を通ったんだ。 なぜか平気そうな顔をしている先輩が不思議で仕方ない。 先輩の体に異常がないことにホッとすると、先輩が俺に抱きついてきた。 「城崎…っ」 「え、何?どうしたんですか?」 優しく抱きしめ返す。 先輩は俺の胸元に顔を埋めて、小さく呟いた。 「…………好きだよ。」 え………? 幻聴が何かか、今のは? 先輩が『好きだよ』って言った? 俺の妄想? 失礼を承知の上で、聞き返す。 「今…なんて…?」 「大好きだよ、城崎。」 ?!?!?!! ま、え、待って…!? 聞き間違いじゃないっ?!! 「やっと言えたぁ…。」 先輩が安心したように俺の腕の中で力を抜いて、ハッとして先輩を抱きとめる。 「先輩…っ」 「城崎、好き…。」 「お、俺も…!俺も大好きです!!愛してます!!」 「ははっ。痛いよ、バーカ。」 何これ、何これ?? 幸せすぎて苦しい。 全力で先輩を抱きしめると、先輩は笑った。 「嬉しい〜…。夢?俺、夢見てるの?」 「髪一本抜いてやろっか?」 先輩は本当にブチっと髪を一本抜いた。 いった……。 「痛っ!うぅ〜……、夢じゃない〜……。」 「ははっ…。うん…、遅くなってごめんな、城崎。」 「うぅ〜っ……」 幸せすぎて涙が出てきた。 先輩は俺を宥めるように、頭を撫でながら一緒に泣いた。 好き。 先輩が大好き。 愛おしくて、離れたくなくて、ずっとそばに居たい。 「今日さ、ベッドで一緒に寝よ?」 「いいんですか…?」 「城崎が抱きしめてくれてたら、大丈夫だと思う。」 昨日みたいに顔色が曇るわけでもなく、無理してそうにも見えない。 俺の腕の中で安心しきっている先輩が、死ぬほど愛おしくて堪らなかった。

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