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第131話
「先輩が嫌って言うまで離さない…。」
「……ふふっ、城崎、とりあえずリビング行こ?」
ガッチリと先輩をホールドしていたら、先輩につっこまれた。
そうだよな。お腹空いてるよな。
「そ、そうですね!夕食も作ってるんです!」
「やったぁ。今日は何?」
「夏野菜カレー…。でもこんなことなら、もっとごちそうにすればよかった…。」
「カレー好きだよ?嬉しい。」
先輩はそう言ってくれるけど、いやいや、こんな日はお赤飯とか、いやそうじゃなくてピザとかチキンとかご馳走に…。
でも先輩が嬉しそうだから、なんかそれだけでもういっかって、俺も嬉しいや。
食事を終え、先輩に先にお風呂を譲る。
一緒に入りたいけど、さすがにそんなことも言えず…。
「城崎、ありがと。気持ちよかった。」
「はっ…!」
先輩の裸…なんて良からぬこと考えていると、後ろから声かけられて驚いた。
スウェットを着て、サッパリした顔の先輩。
妄想をしていた自分が恥ずかしくなって、逃げるように風呂に入った。
本当に俺、下心なしで先輩とあのベッドで寝られるのか…?
なんかもう止まらない気がするんだけど。
好きって言われただけで、胸がいっぱいいっぱいなんだけど。
煩悩に塗 れては、シャワーで頭から水を浴び、また湯船で体を温めて煩悩に塗れ、水を被り…。
繰り返していると、いつもの倍は風呂に入っていた。
リビングでテレビをぼーっと見つめている先輩を抱きしめる。
「お待たせしました…。」
「ひぁっ!」
「えっ?」
ビクンッと体を震わせる先輩。
でも、今の声は多分恐怖とかじゃなくて、感じて……。
「髪!乾かしてこい!」
「ええ〜…。すぐ乾かしてきます…。」
ちぇ、なんだ…。
水滴が落ちただけか。
一瞬感じてくれたのかなんて、嬉しい妄想しちまった。
ドライヤーでしっかりと髪を乾かし、リビングに戻る。
「先輩、寝に行こ?」
「う、うん…。」
「手繋いで入ったら安心する?それとも抱っこしようか?」
「手繋ぐでいい…。」
不安そうな先輩。
肩を抱き寄せて、寝室の扉を開ける。
先輩の体に力が入った。
「大丈夫そう?少し肩に力入ってますけど…。」
「大丈夫…。」
本当かよ…。
笑ってしまうほどガチガチなくせに。
「抱きしめていいですか?」
「うん…。」
抱きしめると、先輩の体から少し力が抜ける。
先にベッドに座って、膝を叩いた。
「先輩、おいで。」
手を広げると、先輩は誘われるように腕の中に倒れ込んできた。
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