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第136話

今夜も先輩はベッドで寝てくれた。 俺の腕の中でぐっすりと。 なんて幸せなんだろう…。 「先輩、おはよ…。」 「ん〜…、城崎……」 先輩は欠伸をしながら俺に抱きついてくる。 可愛いなぁ。 優しく抱きしめ返すと、満足そうに口角を上げる寝ぼけた先輩。 「先輩…、めちゃくちゃ嬉しいんですけど、こんなことしたら離してあげられないです…。」 「今何時…?」 「もう7時過ぎてます…。」 「…………えっ?!」 7時30分。 デジタルウォッチを見て伝えると、先輩も時計を見て飛び起きた。 「遅刻…!!」 「しないしない。大丈夫。」 「お、おまえ足速いからって…!」 「あはは!」 特に悪気があったわけではないけど、先輩にとっては嫌味のようだったらしく、俺に飛び掛かってきた。 ボフンっとベッドに押し倒される。 何これ。ラッキー? 先輩、顔赤くなっちゃった。 「もう…、急に怒ったり、照れたり、朝から忙しいですね、先輩は♡」 「うっさい!馬鹿にしてんだろ。」 「してない♡先輩、遅れちゃいますよ?」 「あー!!もう!城崎のバカ!」 先輩は顔を赤くしたまま大急ぎで準備を始め、15分後には家を出た。 本当、(せわ)しないなぁ。 駅まで走って息切れしている先輩を、電車内で周りから隠すように守った。 職場に着いて、先輩は真っ直ぐ部署へ向かってしまったが、俺は社内のコンビニで朝ごはん…といっても、ゼリー飲料なんだけど、自分と先輩の分を買ってから向かった。 「おめでとう〜っ!!綾人、よかったなぁ!」 「ありがと。」 部署に着くと、何だか先輩の席の辺りが盛り上がっていた。 は……? 柳津さんが先輩を抱きしめてる…? 「殺す……。」 大股で二人に近づく。 「何の話してるんですか…。」 「城崎っ!おめでとう〜!!よかったなぁ!」 喧嘩を売るつもりで踏み込むと、突然柳津さんに抱きしめられた。 一瞬何が起きたかわからなくて、脳が停止する。 「はっ?!何?!キモいんですけど。」 「え〜!なんか楽しそうなことしてるのズルイです!俺も〜っ!」 「うわっ!キモい!!何?!先輩、助けてっ!!」 柳津さんから解放されたくて暴れていたら、何故かちゅんちゅんまで俺に飛びついてきた。 キモいキモいキモい!!! 俺を抱きしめていいのは先輩だけなのにっ!! 「あはは!」 先輩は抱きしめられる俺を見て、のんきに笑っていた。

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