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第137話

あの後、秘書課や総務課、それに経理にマーケティング部、いろんなところから人が来ては、「結婚したんですか?」とか「別れたんですか?!」とか同じ質問をされ続けて疲れた。 誰が別れるかよ。 冗談キツ……。 「マジでキツかった…。」 「まぁまぁ。」 昼休み、やっと先輩と二人きりになれて、俺は安心と疲れで大きなため息を吐いた。 先輩の手のひらに頬を擦り寄せ、癒しをもらう。 「別れんなよ?」 俺が別れたのかって聞きまくられてたから、先輩はそう言ったのか。 別れる気なんてさらさらない。 「こっちのセリフです。俺は絶対別れる気ないんで。」 「本当?」 この人、まだこんなこと言ってるのか。 本気なのか冗談なのか、わからないな。 「どれだけ好きだと思ってるんですか…。自己肯定感低すぎてビビるんですけど。」 「好きだから不安なんだよ。」 「だからその分愛を伝えてるでしょうが。」 「そうだけど…。」 これでもまだ足りないらしい。 いいんだけどね、先輩に愛を伝えるのは苦ではないし。 逆に慣れられても嫌かもしれないけど。 どうやったら先輩は俺に愛されてるって信じて疑わなくなってくれるんだろうなぁ。 先輩の小指をすりすりと撫でた。 「あ〜……。このままここでキスしてやりたい。」 「なっ…?!」 すぐ赤くなっちゃって。 かーわいい。 「嘘ですよ。もー可愛いなぁ。」 「揶揄うな!」 「早く口にさせてくださいよ。」 目を瞑って、キス待ち顔をする。 少しの沈黙の後、唇にふにっと何かが押し当てられて目を見開いた。 「…って、なんだ。指か。」 「俺の唇かどうかも分からないのかよ?」 「わーかーりーまーすー。しっとりしてなかったからおかしいなって思いましたけど、普通あのタイミングで触れたら唇かと思うでしょ。」 めちゃくちゃ期待してしまった。 もう。先輩のバカ…。 「あははっ。残念でした〜。」 こいつ〜?? 俺のピュアな心を踏み躙って笑うだと…?? 先輩の手首をガシッと掴む。 「先輩…。帰ったら覚悟しててくださいね?」 「……あ、あの…。」 にっこりと笑ってそう伝えると、先輩はたじろいだ。 俺が怒ってるって分かってるね、この反応は。 「覚悟、しててくださいね?」 「………はい。」 先輩は嫌そうに返事した。

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