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第141話
次の日の朝、俺は確信していた。
先輩が絶対謝ってくることを。
だから昨日のことなんてなかったように振る舞うと決めた。
「おはよ、先輩♡」
「お…はよ……」
先輩はきょとんとしていた。
ふっ…(笑)
先輩のアホ面ってレアかも。
先輩を抱きしめて自分の充電してから、朝ごはんを作りにリビングへ向かう。
すると、先輩も俺を追いかけるようにリビングへ来た。
「城崎…、昨日……」
やっぱりね。
謝ろうとしてるのバレバレだ。
「あーあー。いいんです。言わなくて。どうせ謝ろうとしてるんでしょ?聞き飽きました。」
「でも…」
「でもじゃない。」
昨日準備しておいたフレンチトーストを温め、先輩の前に置いた。
作戦成功。
一瞬でもフレンチトーストに興味惹かれたな、この人。
「昨日は俺の手が早かったのが悪いんです。先輩はなーんにも悪くない!だから謝らないでください!」
「………うん。」
言い包めると、先輩は少ししょんぼりした顔で頷いた。
………思ってた反応と違う。
「暗い顔しないで?俺、先輩の笑った顔が好き。」
「うっ…、いひゃい……。」
頬を横にビヨーンと伸ばすと、先輩の顔が伸びる。
和むなぁ…。
思わず笑うと、先輩はプンスカ怒っていた。
先輩が朝食食べてる間に、洗濯物干して着替えて…。
よし、準備完了。
「先輩、ハグ!」
玄関で手を広げると、先輩は俺の胸に飛び込んできた。
あ〜……、かわいい……。
「帰りまで耐えられるかな〜…。」
「城崎、今日営業の後直帰だっけ?」
「そうなんですよぉ…。職場戻って先輩と帰りますけどぉ…。」
「いいよ、出先から家のが近いだろ?」
「先輩と帰りたい…。」
直帰って普通喜ぶところなんだけど、先輩と帰りたいから嬉しくないんだよなぁ。
手を繋ぎながら駅までの道を歩く。
帰りもこうして歩きたいんだけどなぁ、俺は。
「美味い飯作って待っててよ。早く帰れる分、うんっと手込んだやつ。」
「も〜〜。先輩にお願いしたら断れないです…。」
手の込んだうまい飯ってなんだよ〜。
スマホで調べると、主婦が朝から下味つけて作るような物ばかり…。
時間あるとは言っても、帰ってからだしそこまでの余裕はないしなぁ…。
「ねぇ、先輩は何が食べたい?」
「へ?」
「夜ご飯。言っておきますけど、何作るか考えるのだって大変なんですからね?」
「あぁ、ごめんごめん。うーん…、じゃあ唐揚げとか?」
先輩は何か別のことを考えているみたいだった。
結局夜はチキン南蛮にすることになり、俺は営業終わり、そのままスーパーへ寄って家へ帰って、先輩を待った。
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