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第142話
おかしい………。
結局あの夜、先輩が帰ったのは19時半だった。
残業してたって言ってたけど、本当か…?
柳津さんに聞いたけど、「俺は定時で帰ったから知らねーよ。」って。
もっと先輩のこと気にしろっての…。
そして何より今日もだ。
今日も先輩の帰りが遅い…!!
「ただいま〜。」
「先輩っ!おかえりなさいっ!!」
「うわ、何…?!」
ドアの音がした瞬間、俺は急いで玄関に走った。
扉の向こうから先輩が現れた瞬間に抱きしめる。
「俺が部長に捕まってる間に帰ったでしょ!!」
「だ…、だって俺一人で行きたいとこあるって言ったのに、離してくんないから…。」
「俺がいちゃダメなんですか?!」
「ダメっていうか…、うーん……。」
月曜から先輩が変だ。
どこに行くかも教えてくれないし、俺がついていっちゃダメらしい。
ずっと煮え切らない返事で誤魔化されている。
先輩に限って浮気なんて絶対にあり得ないだろうし、女と会うとかなら俺を不安にさせないために言ってくれるだろうし…。
本当に何隠してるんだ?
「城崎、お腹すいた。」
「話してくれるまでダメ!」
「え〜……。」
ぐぎゅるるぅ〜…と先輩の腹の虫が鳴く。
しばらく無視していたけど、あまりにもすごい音と、先輩の上目遣いに負けて、夕食を提供してしまった。
「ん〜!うまっ!」
「もう!先輩、本当に教えてくださいよ!!」
「まぁ気が向けば。」
「なんですか、それ!いつ気が向くんですか?」
「わかんない。……美味ぁ。」
「先輩っ!!」
この〜〜〜っ!!!
俺がこんなにも心配してるのに、全然話す気ないじゃん!!
皿を洗ってる間も聞き続けたが、先輩は答える様子はなかった。
「明日は一緒に帰るんですからね!」
「わかったってば。」
「隠し事されたら心配なの、先輩だって同じでしょ?」
「そうだな。悪かった。」
むぅ…。
なんか流されてる感じ…。ムカつく…。
「なぁ、城崎。一応俺、もう30なんだけど。」
「知ってますよ、そんなこと。」
「そんなに心配されるような年齢じゃないっつーか…。」
「心配させるようなこと繰り返してる大人に言われたくありませーん。」
ついこの間、薬飲みすぎで意識失ったくせに、どの口が言うんだか。
嫌味っぽくいうと、先輩は目を逸らして立ち上がった。
「風呂入ってくる。」
「あ。逃げた。」
文字通り先輩はリビングから逃げた。
あんまり探りすぎも良くないか…。
仕方なくテレビを見ながら、先輩が戻ってくるのを待った。
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