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第143話

先輩がお風呂に逃げてから40分。 いつもより遅い。 場所分かってるから、心配はしてないんだけどさ…。 ちょっと心配…? 倒れてたらどうしよう。 なんて思ってソファから立ち上がると、ちょうど先輩が風呂から上がってきたので、もう一度ソファに座る。 「先輩…?なんで泣きそうなの?」 潤んだ先輩の瞳。 帰りが遅いことと何か関係しているのかと心配になってそう尋ねるも、先輩は無言で首を振って、俺の上に跨った。 「え。なになに?何のドッキリ?可愛いですけど…。」 「今は黙って抱きしめられてて…。」 なんだそれ…。 殺し文句…? 「了解デス…。」 俺は従順だ。 先輩に従って、何も言わず抱きしめられる。 温かい…。可愛い……。 「先輩…、俺もお風呂入ってきてもいい?」 「…………いいよ。」 「すぐ戻るから待っててくださいね…♡」 つむじにチュッとキスを落として、浴室へ向かう。 入ってすぐに違和感に気づいた。 いや、普通の人なら何の違和感も感じないだろう。 自分でも分かる、俺は変態だと。 「先輩……、マジで……?」 俺は気づいてしまった。 剃刀(かみそり)の位置が若干変わっていることに。 とっっっても期待しながら排水溝の蓋を外すと、ゴミ受けに毛が残っていた。 え?え…? 先輩が自分で毛を剃ったってこと…? だから遅かったのか? というか、それであの反応…? 「か…、可愛すぎる……。」 俺は何事もなかったかのようにそっと蓋を戻し、温度調節のハンドルを捻って水にした。 祓え。飛べ、煩悩……。 鼻を押さえて上を向く。 先輩のスベスベのあそこを思い出しただけで熱くなる自分が情けなかった。 これって、やっぱり先輩は俺とシたいって思ってくれてるってことでいいの? 心は俺を受け入れてくれてるってこと…?だよな?? ううう…。抱きしめたい………。 「せんぱ〜い♡」 「え、何?!冷たっ!!」 「あっためてください〜♡」 「バカ!やだよ!!」 浴室から飛び出て、雑に水気を払い、とりあえず服を着て、律儀にリビングで待ってくれていた先輩に飛びつく。 先輩は嫌だと言いながらも、俺のことを蔑ろにはできないらしく、甘えた分しっかり甘えさせてくれた。

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