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第152話

12時過ぎ。 映画の前にパンケーキを食べたところだけど、もう昼ごはんの時間。 「昼ごはんにしましょうか。何食べたい?」 「うーん……」 「冷たいものの方が食べやすいですか?お蕎麦とかどうですか?」 「あっ、それなら食べれるかも。」 「じゃあ決まりですね。」 さすがにあまりお腹は空いていなかったのか、先輩は茹でた蕎麦のうち四分の一ほどだけ食べて満足していた。 先輩が食べられなかった分を全部食べる。 俺はパンケーキは少ししか食べていないから、これくらいは余裕だけど。 それにしても少食すぎて心配になる。 「これから何しますか?」 「え、あー……」 午後はノープランだった。 午前中で元気出してもらって、あとはイチャイチャ…みたいな能天気なこと考えてた俺を殴りたい。 先輩は時計を見て、俺の服の裾を引っ張った。 「城崎…、ごめん。ちょっと用事があって…。」 先輩は俯いてそう言った。 目を合わせないってことは、俺に話しにくい内容なのか。 いや、考えすぎか…。 「何…?どこか行くなら一緒に…」 「本当すぐ帰ってくるから。2時間くらい。」 「どこ行くんですか?」 「………涼真の家。」 先輩は少し間を置いて答えた。 嘘…?じゃないよな…? ダメだ。心配すぎて先輩を疑うなんて…。 疑ってるなんて思われたら、余計に信頼無くしちゃう。 「………わかりました。」 「せっかくの休みなのに、ごめん。」 「ううん。でもせめて駅までは送らせて?」 「いいよ。悪いし…。」 「お願い。俺が送りたいんです。」 「わかった。」 先輩は申し訳なさそうな顔をする。 少しでも一緒にいたいのと、またあの道で倒れてたから一人で歩かせたくないだけなんだけど。 先輩ってば、本当に分かってるのかな? 案の定、家から駅までの道は、先輩の表情が暗くなっていた。 駅に着いて、先輩の手を離す。 「いってらっしゃい。」 「いってきます…。」 「迎えに来るから、また連絡ください。遅くなりそうだったら教えて?」 「うん、分かった。」 「気をつけてね。」 先輩を抱き寄せて、頭頂部にキスを落とす。 悪い虫がつかないようにおまじないだ。 改札を通る先輩を見送って、いつも通り駅の外から電車に乗るまで見届ける。 柳津さんの家に行くって言ってたから、会社方面だよな。 先輩どこだ…? 電車はまだ来ていないはずなのに、先輩の姿を見つけられない。 逆側のホームの電車が来て、人が少なくなった。 どれだけ目を凝らしても先輩の姿が見つからなくて、俺は改札を通ってホームに向かう。 「いない……?」 ホームに来ても、先輩の姿はなかった。

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