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第153話
まさかと思い、柳津さんに電話をかけた。
先輩が嘘をついた…?
そんなまさか…。
杞憂 であってほしい。
そう願いながら、柳津さんが出るのを待つ。
『もしもし。どうした?』
「柳津さんっ、今日って先輩が家に来るとか言ってましたか?!」
『え…?知らねぇけど…。』
最悪だ……。
先に確認すべきだったんだ。
なんで?どうして嘘なんかついて…。
まさか、また一昨日行ってた場所に行くつもりか?
そんなところに行って、先輩がまた苦しい思いをするのは嫌だ。
でも、行き先がわからない。
先輩がいつもと逆方面の電車に乗ったことは、ほぼほぼ間違いないだろう。
だけど、逆方面に先輩の行きそうな場所なんて……。
「クソッ…!!」
見当さえつかない自分が情けない。
『おい、城崎?どうしたんだよ?綾人、俺の家に行くって言ったのか?』
「はい…。でも約束してないんですよね?」
『してねーけど。俺からも連絡してみるし、もし来たらすぐにおまえに連絡するから。とにかく落ち着けよ。』
「落ち着いていられるわけないでしょ!一昨日あんなことがあったばかりで…。あぁ、もう!!」
『一昨日?』
「今はそんな説明してる場合じゃないです。とにかく俺は先輩探してくるので、柳津さんは先輩と連絡取れたら教えてください!」
『あぁ、わかった。』
柳津さんとの通話を切り、先輩の連絡先を押す。
とにかく電車が来るまで先輩に電話をかけ続けた。
出て…。電話に出て…。
お願い、先輩……。
何度電話をかけても、先輩が電話に出ることはなかった。
俺は電車に乗り、一駅ずつ降りては駅周辺を探し回った。
無闇に探し続けても見つかるはずがなくて、陽はどんどん落ちていき、辺りは真っ暗になる。
柳津さんから電話が来て、俺はすぐに応答した。
「先輩来ましたか?!」
『いや…、来てねぇよ。その様子だとまだ見つかってないんだよな?』
「…………」
『俺もしばらく家で待った後、思いつく場所探してみたんだけど見つかんねぇ。家には帰ってないんだよな?』
「………分からないです。」
『は?一番思い当たるのはどう考えても家だろうが。とにかく家に帰れ。』
柳津さんにそう言われ、冷静に考えるとその通りだと思った。
頭がぐちゃぐちゃになって、そんなことすら気づけないなんて。
どうか家にいてほしい。
帰ったら、「おかえり。」って、そう言って迎え入れてほしい。
そんな願いは叶わず、家に帰っても先輩の姿はなかった。
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