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第155話
「すみません…。弱音吐きました。そうですよね。俺が先輩から離れるなんてどうかしてる…。」
「そうだよ。らしくねーこと言うな。」
「俺、先輩から拒絶されるまではそばに居ていいですかね…?」
「いいだろ。さて、明日の作戦会議するか。」
柳津さんは我が物顔でソファに腰掛けた。
ここ、俺と先輩の家なんだけどな…。
「なんで帰ってこない前提なんですか。」
「もう綾人も宿くらい見つけてるだろ。帰ってきたらラッキーってことで、明日のこと考えるぞ。」
まぁそれもそうか…。
帰ってきてくれればいいんだけど…。
「警察に捜索願とか…。」
「ああいうのは条件満たしてないと家出人扱いで探してくんねーんだよ。」
「先輩が行ってるメンタルクリニックの先生に証明書的なもの書いてもらったら無理ですかね…?」
「そもそも捜索願ってのは、友人からは無理なんじゃなかったっけ?家族とか、雇用主とかしか受け取ってもらえないって聞いたような…」
「恋人ですけど、俺。」
恋人は受理してもらえるんじゃなかったっけ?
テレビで見たような曖昧な記憶でそう言うと、柳津さんはため息をついた。
「バカ。男同士って時点で相手にされねーよ。それこそ、理解のない警察官とかだったら心ないこと言われるぞ。俺はお前らが馬鹿にされるようなこと、絶対嫌だ。」
「柳津さん…。」
「警察に届け出すのは反対。最終手段としてはありだけど。」
思ったより柳津さんがしっかりしてて驚く。
俺、柳津さんがいなかったら変な方向に突っ走ってたかも…。
「城崎は二人で行った場所とか、思い当たるところ全部探して。俺は綾人に関わりのある人に片っ端から連絡とってみる。」
「騒ぎ大きくしたら、先輩嫌がりませんか?」
「それとなく聞くよ。つーか、さっきまで捜索願出すなんて言ってた奴が何言ってんだ。」
「たしかに…。」
「まぁ明後日から仕事だし、それでも音沙汰なかったら考えよう。とにかく城崎は一旦落ち着いて、よく寝て明日に備えな。」
「眠れる気がしません…。」
「お前が倒れたら元も子もないだろ。」
柳津さんは「じゃあな。」と帰っていった。
時間は21時。
先輩からの連絡はない。
心配すぎて眠れるはずもなく、だからといって柳津さんの言う通り、俺が倒れたら探すこともできなくなるので、必死に目を瞑る。
目を瞑るだけでも、少しは寝た気分になる。
眠れない夜はとても長くて、今にも探しに行きたい気持ちを我慢した。
朝の4時にはベッドから出る。
先輩は朝が弱いから、始発の時間に探しに出ても無駄かもしれない。
でも少しの希望も捨てきれず、俺は始発に乗れるように身支度をして家を出た。
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