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第158話
「おはようございます。」
「おー。おはよう。」
始業時刻間際に蛇目さんが出勤する。
もちろん俺は無視。
柳津さんが挨拶を返した。
「あれ?主任はお休みですか?」
「そうなんだよ。」
「やりすぎちゃいましたかね?」
………は?今なんて?
ガタンッ!!
「何か知ってるんですか?」
「ちょ、城崎?!」
「前もあんな写真送ってきて…。先輩に何したんだよ?!」
蛇目の胸ぐらを掴んで問い質す。
唯一、柳津さんだけは俺を止めようとしていたけど、他の人たちはまだ気づいていなかった。
蛇目はヘラヘラ笑って、俺の耳元で囁いた。
「浮気ですよ。主任の心が城崎くんから離れかけていたから、隙を狙ってお誘いしたんです。……主任、可愛いですよね。体のラインも綺麗ですし、善がる時の声や仕草も官能的で…」
「てめぇ!!」
「城崎っ!!一旦落ち着け!!」
殴りかかろうとすると、柳津さんが俺を止めた。
他の上司も来て、俺を押さえる。
周りは不穏な空気にシン…と静まり返った。
「離せ!!離せよ!!」
「わかった。わかったから一旦落ち着け。暴力はダメだって分かるだろ?!な?」
どれだけ抵抗しても、男三人に押さえつけられたら、さすがの俺も力負けし、会議室に閉じ込められた。
鍵をかけられ、これじゃ牢屋と変わらない。
「おい!!出せよ!!あいつと話をさせろ!!!」
ドアを叩いて叫ぶ。
許せなかった。
先輩は浮気をするような人じゃない。
あいつに無理矢理、身体を暴かれたんだ。
前の写真だってそうだ。
やっぱり無理矢理撮られたんだ…。
許せない。
絶対に許せない。
「城崎、マジで落ち着け。おまえがそんなんじゃ、蛇目と話す許可すら下りねぇよ。」
「!!!」
ドアの向こうから柳津さんの声がした。
落ち着けるわけない。
先輩が音信不通になったのがあいつのせいだとしたら、先輩は今どんなに不安な気持ちでいるんだろうか。
心配で心配でたまらない。
「柳津さんなら分かるでしょ…?話をさせてください…。」
「…………俺も同席するからな。待ってろ。」
柳津さんはため息とともにその場から去っていった。
しばらくすると、ガチャ…と扉が開いて、柳津さんと蛇目が中に入ってきた。
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