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第163話

近くにあった古びたホテルに到着する。 怪しいけど、ラブホテルではない…と思う。 ビジネスホテルなのかな。 「ここ……」 「?」 「……俺が泊まってたとこ。」 「そうなんですか?じゃあ感謝しないとですね。」 先輩が辿り着いた近くにホテルがあってよかった。 まぁ古いとは言ってもホテルには変わりないから、先輩がちゃんと寝床につけていたならいい。 車から降りて、先輩を毛布に包めたまま抱き上げる。 「城崎…、下ろして…。」 「ダメ。逃げたら困るし。」 「でも、人に見られたら恥ずかしい…。」 「手で顔隠したら?俺は恥ずかしくないし。」 先輩は俺に言われるがまま、両手で顔を隠した。 可愛いな…。 フロントで二人分の代金を払い、中に入る。 部屋に着いてすぐ、先輩をベッドに下ろし、電気をつけて風呂を沸かした。 先輩は俺を見て申し訳なさそうに眉を下げる。 「どうしたんですか?」 「城崎…ドロドロ……。俺のせい…?」 「あぁ、違いますよ。気にしないでください。」 先輩を土管から出す時に、ぬかるんだ地面に膝をついたから汚れた。 そのまんま膝付いて先輩のこと抱きしめてたし。 でもそんなのが嫌だったら、先輩のこと助けられないし。 気にしてるわけないのに、先輩は気になるらしい。 「とりあえず、話聞いてほしいからお風呂入りましょう。体綺麗になったら聞いてくれるんでしょ?」 「えっ…?一緒に入るの?」 「当たり前でしょ。そんなボロボロの状態で、一人で入らせるわけないじゃん。」 服を脱ぐと、先輩は顔を赤らめた。 今から一緒に風呂入るんですけど…。 先輩の腕を引いて立たせ、服を脱がせた。 この人、マジで飯食ってなかったな…。 腹と背中くっつきそうなくらい腹が凹んでて、血色も悪い。 本人は体が汚れているのが一番気になるみたいだけど…。 「そんなジロジロ見んな…。」 「えー…。無理なお願い。」 恥ずかしそうに俯く先輩をお風呂に連れ込む。 全身温めて、汚れも落として、恥ずかしがり屋の先輩が少しでもリラックスするためには…。 手っ取り早く泡風呂に切り替え、お湯に浸かって体を温めながら先輩を洗うことにした。 「痛っ…」 「あ……。」 先輩の両膝からじわじわと血が滲む。 さっき土管から引き摺り出した時に擦りむいた痕だ。 「ごめんなさい。痛みますよね…。」 「大丈夫…。」 先輩は歯を食いしばりながら湯船に足を入れる。 泡風呂失敗だったか…? 「先輩、痛いなら…」 「大丈夫。ちょっと染みるだけ。」 先輩は平気だからと言って、泡風呂に浸かった。

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