165 / 242
第165話
愛おしすぎて、どうすればいいか分からない。
蛇目とのことが未遂だと分かって安心したのか、先輩は俺に甘えてくるし。
こんな状況だから絶対下心なんて見せないって決めてたのに、先輩が可愛すぎてなんか下の方に熱が集中してきた…。
「先輩…、そろそろ風呂あがろっか…?」
「………城崎…、俺……」
「………?」
頬を蒸気させて、目を潤ませて上目遣いで見つめられる。
待て待て待て。
俺の理性、耐えろ。頑張れ。耐えろ……。
「先輩…?」
「……暑い…。」
「えっ?!わっ、えっ?!」
胸元に倒れ込んできた先輩の体は、さっきまで冷え切っていたのが嘘のように熱かった。
さっきのは俺を誘惑してたとかじゃなくて、のぼせてた?
いや、違う…。これはまさか……。
お風呂から上がって先輩用に持ってきていた服を着せ、フロントに体温計を借りに行く。
ピピッと鳴って確認すると、体温計は40度を示していた。
体力も免疫力も落ちてる時に、雨に打たれてあんな寒いところにいたら、そりゃ風邪引くに決まってる。
布団を掛けて、冷たいタオルを作りに行こうとすると、先輩は俺の腕を掴んだ。
「行かないで……。」
苦しそうに息を吐きながらそう言った先輩を、放っておけるわけなかった。
布団に入って、先輩を抱きしめる。
「大丈夫。ずっとそばにいます。」
「……うん…。」
「だから安心して寝てください。」
「…うん……。」
先輩は安心したように目を閉じた。
お風呂から上がったばかりなのに、先輩は額に玉の汗を浮かべていた。
タオルで拭き取ると、ペタッと前髪が額につく。
「城崎…、好き…。大好き……。」
「うん。俺も好きだよ。」
「城崎…、城崎……」
うわ言のように何度も俺の名前を呼んで、好きだと呟く。
俺は先輩の言葉全部に返事した。
先輩に聞こえてなくてもいい。
心の中だけじゃもう溢れそうだから、言葉にして吐き出していく。
「先輩、愛してるよ。」
「……城崎…」
「死ぬまで離さない。おじいちゃんになっても、ずっと一緒にいてね。」
「…ん……」
寝ぼけながらも返事してくれる。
はは。今度逃げようとしたら、今の言葉掘り返してやろうっと。
あー…、俺も体力の限界かも…。
連日の疲労と不眠が、先輩を見つけた安心感で一気に襲ってきた。
先輩あったけぇ…。
温かいというよりは熱いが正解だけど。
でも、先輩の体温を感じられるだけで幸せだった。
ともだちにシェアしよう!