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第167話
マンションの前に到着し、車を停める。
うとうとしている先輩をお姫様抱っこして、部屋まで運ぶ。
「……?!」
「あ、起きた。」
エレベーターに乗ってる途中で、先輩はハッと目を覚まして、顔を真っ赤にして抵抗して俺の腕から降りた。
照れて真っ赤になっているのに、繋いだ手は離そうとはしなかった。
鍵を開けて中に入り、先輩を抱きしめてつむじにキスを落とす。
「先輩、おかえりなさい。」
「た…、ただいま…。」
ぎこちなかったけど、先輩が帰ってきたのだとホッとする。
本当はこのまま一緒にいたいけど、下に車を停めたままだから、一旦家を出なければいけない。
「じゃあ車返してくるから、先に寝ててくださいね。」
先輩の頭をポンポンと撫でて、家を出て鍵を閉めた。
真っ直ぐリビング行ってくれるかな…。
先輩が行方不明になってから、家は着替えと風呂と仮眠のためにしか帰ってなかったから、すげー散らかってるかも…。
散らかってるかどうかすら覚えてないけど…。
車があるうちにスーパーに寄って、夕食と明日の食料を買い、レンタカーを返して、電車で最寄り駅まで帰る。
早く着かないかな…。
一秒でも早く家に帰って、先輩と一緒にいたい。
駅に着いてすぐ、走って家に帰ると、先輩は俺の服を抱きしめて布団で眠っていた。
ベッドはやっぱダメなんだな…と若干落ち込みながらも、シャワーで汗を流して、先輩の隣に横になる。
連日の疲労が一夜にして取れるはずもなく、俺は先輩を抱きしめてすぐに眠ってしまった。
もぞもぞと何かが動いて目を開けると、先輩は既に起きていた。
「あれ…。先輩、起きたの…?」
「城崎…」
先輩の額を触ると、熱はだいぶ引いたようだった。
「お粥食べますか?材料買ってきたので、いつでも作れますよ。……ふぁ。」
「もうちょっと寝る…。」
やべ…。
俺が欠伸をしたからか、先輩はそう言った。
お腹空いてねーのかな?
でも、今は眠いって思ってくれてた方が助かるかも…。
めちゃくちゃ眠い。
「ん、そっか。じゃあ俺も寝る。」
「うん…。」
「夜は食べさせますからね。」
そう言うと、先輩は首を縦に振った。
素直に頷いた先輩の頭を撫で、いい子いい子する。
先輩を抱きしめてもう一度眠りにつこうと目を閉じた。
けど、先輩はまだ俺の腕の中でもぞもぞ動いていて、いいポジションを見つけたのか、顔を埋めて深呼吸をする。
なんだか嗅がれてるみてぇ。
嬉しいような、照れ臭いような、少しムズムズした気分で寝たふりをしていると、先輩はぼそりと呟く。
「大好き…」
うっっっ!!
可愛い…!!
え?今、俺って寝てると思われてるんだよな?
寝てる俺にも好きって言ってくれてんの?
いや、俺もよく言うけど。
ぎゅーっと抱きしめたい気持ちを抑え、先輩の行動を見守った。
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