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第169話

「分かった。じゃあ明日、先輩の体調がよかったら那瑠に会おう。」 「え…」 先輩は不安そうな顔をした。 でも多分、俺がいるときに話し合うべきなんだと思う。 毎回先輩は俺がいないときに那瑠に何か言われて落ち込んでる。 あいつとの疾しいことなんて今はない。 「先輩が一人で会うから、あいつ嘘吐きまくってんだろ。だから俺も会う。」 「でも、城崎は仕事が…」 「あー、明日まで休みなんで。」 先輩は不思議そうな顔をしたけど、その理由はちょっと言いづらい。 蛇目のこと殴って謹慎になったなんて…。 いつかバレるんだろうけど。 「それは気にしないでください。てか、他に隠し事ない?不安に思ってるのはそのことだけ?」 「……うん。」 先輩は考えた後、首を縦に振った。 那瑠か…。 まさかこんなにも後々面倒なことになると思わなかったな。 というか、あの頃は自分がこんなにも人を好きになるなんて思わなかったから。 先輩と出会えてよかった。 一緒にいればいるほど溺れてしまう。 好きで好きで堪らない。 「城崎……、俺のこと、好き…?」 「大好き。愛してるよ、先輩。」 頬にキスしてから、首筋に顔を埋める。 先輩、今週は休みって言ってたよな…? 「ひぅっ…!」 強く吸い上げると、先輩は身体をびくつかせて俺の服を掴む。 一目で分かるくらい綺麗に付いたキスマークを確認して、独占欲が溢れる。 「付いた…?」 「うん。綺麗に付いた。」 「来週には消えるよな?」 「んー?どうだろ?」 (とぼ)けると、先輩は「バカ。」と俺を軽く小突いた。 職場の人たちにいじられるのを気にしてるのか、虫刺されとか適当なこと言っておけばいいのに。 俺としては、隠さずに女避けとして使って欲しいけど。 まぁ、社会人として身だしなみは大切だから、先輩は周りの目ってよりそっちの方か。 「もう一眠りする?」 「あ…。うん。する。」 先輩が眠そう…というよりは、俺の目がもう閉じそう。 先輩が寝たのを確認する前に、俺は微睡の中に落ちてしまった。

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