8時に起きて、のんびりと朝を過ごす。 出かけるのは昼からだから…、と思っていたんだけど、先輩は朝から少しそわそわした様子だった。 那瑠と会うの、緊張するのか？ そりゃ、自分に嫌がらせをしてきた相手と改めて対面するのはストレスでしかないか…。 「嫌だったら行かなくていいんですよ？」 「………行く。」 「ん、わかった。」 朝から何度目かになる質問。 先輩の気持ちも尊重したいから、行かない方がいいなんて言いづらい。 昼食を食べたあと、着替えるために先輩は部屋に行ってしまった。 服は……、適当でいいか。 でも、先輩の隣を歩くわけだから、それなりに先輩が隣を歩いて恥ずかしくないような外用の服を選ぶ。 「先輩、準備できましたか？」 「え、あっ…、うん…。」 着替え終わって、先輩の部屋をノックする。 そっとドアが開いて、先輩が出てくる。 去年の夏に、俺のよく行くアパレルブランドで買った、ハーフジップのカットソーを着ていた。 デニムと合わせてて、よく似合ってる。 「服、変じゃない…？」 上目遣いズルいなぁ…。 可愛い。 上まで閉められたジップを指で摘む。 上まで閉めてたら、せっかく昨日付けたキスマークが隠れてるんだよなぁ…。 「似合ってる。強いて言えば、首元もう少し出してもいいかも。」 「こっ、これ以上出したら昨日城崎が付けたキ……」 先輩は途中で口籠った。 やっぱりキスマークが見えないようにしてんだ？ 相手は那瑠なんだから、思いっきり見せればいいのに。 キスマークを指でなぞると、先輩はビクンッと体を揺らす。 「見せつければいいじゃないですか。」 「恥ずかしいだろ！」 「ん〜。俺は結構効くと思うけどな？」 相変わらず頑固。 そんなところも好きなんだけど。 ジップを下げて、現れたキスマークに上からキスする。 「ぅぁっ…」 あー……、クソ可愛い……。 あんまりやると、我慢効かなくなりそう。 首筋から顔を離し、ジップを上に戻す。 「行こっか。」 「どこで会うんだよ？」 「なんかカフェらしいですよ。俺が声荒げてたら注意してくださいね。」 「想像できない…。」 想像して難しい顔をする先輩の手を引いて、家から出た。