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第175話
那瑠は先輩を視界に入れた瞬間、嫌悪感を出した。
はんっと鼻で笑い、先輩を睨みつける。
「何?せっかくナツに会えると思って来てみたら、お兄さんもいるんだ。マウント取りに来た感じ?」
気の強いところは変わっていないらしい。
直接連絡を取ってない時点で、俺が好意で会う約束を取り付けたわけではないと分かっているはずだ。
「おい。その前に言うことがあるだろ。」
「何もないけど。あ、麗子ママ。僕もなんか飲み物ちょーだい。」
那瑠は向かい側のソファに脚を組んで座った。
ジュースを飲みながら、先輩に対して余裕を見せる。
これが強がりだってことはなんとなく分かる。
余裕のない先輩には、この態度さえ圧力になると理解した上でそうしているんだと思う。
「今まで先輩に失礼な態度とったこと、あと嘘言ったことも。謝れ。二度とするな。」
「何のこと〜?」
腹が立つ。
先輩をあんなにも傷つけて、白 を切るなんて。
頭に血が上って、テーブルに拳を叩きつけた。
「ふざけんな。先輩をホテルの前に呼びつけたのおまえだろ。意味わかんねぇ過去の写真送ってきたのも。あと、俺の家で寝たっていう意味わかんねぇ嘘も説明しろ。」
「あーあー。全部バレてる。お兄さん口軽〜い。」
「俺が言わせたんだよ。つーか、そろそろマジでキレそうなんだけど。」
もうキレてるけど。
俺が人前で本気で怒ることなんてそうそうない。
那瑠の前で怒ることも、もちろん初めてだ。
「………んで…」
「あ?」
「なんで…っ!なんで僕じゃダメなの?!僕だって好きなのに!!ナツのこと好きなの!なんでお兄さんじゃないとダメなんだよ?!」
那瑠は突然癇癪を起こしたように泣き叫んだ。
いきなり過ぎて反応に困ったが、今、告白された…?
もしそうなら、俺はちゃんと答える義務がある。
真剣に、目の前にいる那瑠を見て伝えた。
「ごめん、那瑠。お前の気持ちには応えられない。」
「なんで…っ!……ヒック…、僕が先に告 えばよかったの…?」
先に…っていうのは、きっと先輩と付き合う前。
セフレだった頃に告白すればよかったのかってことだと思う。
「違う。もしも先輩と出会う前に那瑠に告白されてたとしても、俺は応えなかった。」
先輩にも聞いて欲しくて、隣に座る先輩の手を力強く握った。
那瑠の目を見て、正直な気持ちを伝える。
「お前が俺に固執するように、俺だって先輩に固執してる。人のこと言えねぇな…。悪かった。でも俺のことは諦めて欲しい。」
「そんなの……」
「お前があの手この手使って、もし俺が先輩と別れることになったとしても、俺は先輩以外と付き合う気はないから。それだけは言っておく。」
「………わかったよ。全部僕がやった…。」
はっきりと答えを告げると、那瑠は俺が質問したことを洗いざらい白状した。
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