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第176話

「昔のナツのセフレから写真を集めて送ったのも僕。ナツを無理矢理ホテルの中に入ってってねだったのも、お兄さんに見せるため。全部ナツとお兄さんを別れさせるためにやった。」 分かっていた。 あの手紙は、俺の今の住所を知っている人物にしかできない犯行だったから。 自分の口からやったと言えるようになっただけ、反省しているということなのだろうか。 「家でシたってのは?」 先輩が気にしていた嘘。 先輩がそれを信じるということは、それ相応の理由があるんだと思う。 俺も本当のことが知りたかった。 「あの日……、ナツは覚えてないかもしれないけど、お兄さんが家から出てくる裸の僕と会った日ね。」 は……? なんで俺の家から那瑠が出てくるって状況になるんだよ…? 困惑して話の続きを聞く。 「僕がお兄さんを装ったの。ナツは熱でバカんなってて、僕のことあんたと勘違いして抱こうとしただけ。」 「は?何のこと…」 俺が那瑠を先輩と勘違いして抱こうとした…? そんな馬鹿なこと、あるわけない。 第一そんな記憶…。 「あれだけ熱出てたら覚えてないだろうね。インターホン押したら先輩、先輩ってさ。僕のことなんて一切見えてないの。めちゃくちゃムカついた。」 熱が出てたあの日。 あの日、確かに俺は夢を見た。 抱きしめていた先輩が、那瑠に変わる夢。 現実だったっていうのか? 俺は……、俺は那瑠を………。 「キスもしてないし、抱かれてもないから。」 「え……?」 あっさりと打ち明けられた事実に唖然とした。 きっと今の俺は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているんだろう。 那瑠のことだ。 俺の態度から、俺に記憶がないことは明白だった。 俺に抱かれたと言えば、俺と先輩の関係は壊滅的な状態になっていたかもしれない。 だから事実がどちらにせよ、"抱かれた"と、そう言うと思っていた。 「ナツも知らないなら、事実がどっちでも抱かれたって言うと思ったんでしょ?」 「…………」 「僕のこと馬鹿にしてんの?認知もされてないのに抱かれるとか普通に無理だし。別れさせたくて、あんたがインターホンに映ってたから、勝手に脱いで、事後のフリしただけ。」 那瑠は席を立って、麗子ママに「ごちそーさま。」と言って店を出て行こうとした。 「待って…!」 「何?もういいでしょ?まだなんか用?」 出て行こうとする那瑠を、先輩が呼び止めた。 震えながら、泣きそうになりながら、声を振り絞っているのが見ている俺にも伝わる。 先輩の頑張りを止めようとは思わない。 俺は先輩の言葉を待った。

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