178 / 242

第178話

先輩の頬にキスをする。 決意のキス。 絶対に、何があっても、俺がこの人を幸せにする。 そして、この人に幸せにしてもらうんだ。 見つめていると、先輩は不意に顔を上げる。 目が合って、ドキドキする。 唇にキスしたい…。 頬を指で撫でると、先輩が目を閉じた。 してもいいってこと…だよな? 先輩の頬を両手で包み、顔を近づける。 唇が触れそうになった瞬間、パァンッと破裂音が鳴った。 「おめでと〜う!これでもう何の邪魔もなくイチャイチャできちゃうのね〜!♡」 「……………」 「れ、麗子ママ…!」 最悪。 タイミング悪すぎるだろ。 空気読めよ。 今はどう考えても、俺と先輩のイチャイチャタイムだろうが。 白目剥いてキレそうになったけど、先輩がそんなに怒ってる様子もないから空気悪くもできない。 麗子ママは俺が怒っていないのをいいことに、勝手に盛り上がっていく。 「二人の仲直りお祝いパーティーよ〜!新しいボトルたくさんあけちゃうんだからっ♡」 「えっ?!」 「まずは1本目!今日入荷したばっかりの年代物っ♡」 驚く先輩を置いて、ポンッとボトルの栓を飛ばす。 この人、お祝い好きだからな…。 「ちょ、麗子ママ!飲み過ぎー!!」 ガブガブと酒を煽る麗子ママを、先輩が止めようとしている。 もう倒れるくらい酔うまで止まらない…ってのは、常連の透さんや拓磨さん、そして俺くらいしか知らないと思う。 「店の前に臨時休業の看板かけてきますね。」 「え?」 「この人、盛り上がるとお酒止まらないんですよ。今日は仕事できないと思います。」 先輩に断りを入れて、店の前にCLOSEのプレートを掛ける。 なんで今から甘い時間って時に、人の介抱しなきゃいけないんだよ…。 店内に戻ると、麗子ママは千鳥足でトイレに向かっていた。 そのままトイレで無理矢理吐かせ、眠ってしまった麗子ママを住居スペースに転がした。 先輩以外の人を久々に持ち上げたけど、重い。 別に先輩が特別軽いわけではないから、麗子ママのガタイの良さ故だろうけど。 バーのカウンター席に着いて、大きなため息を吐いた。 「はー…。俺たちのお祝いパーティーなのに、なんで主役が介抱しなきゃなんねーんだよ…。」 「でもさ、城崎。」 「ん?」 「俺たちが付き合ってること、喜んでくれる人がいるって嬉しいね。」 先輩の言葉に、すっかり毒気を抜かれた。 そうだよな。 俺たちのことを応援してくれてる人がいるって、すごく喜ばしいことなんだよな。 「………ふふっ。」 「へ??」 不思議そうに首を傾げる先輩の肩に頭を乗せる。 俺も先輩の考え方見習いたいな…。 仏かよってレベルで、人の悪を許しちゃう…どころか浄化されるんだよな。 先輩の周りに素敵な人が集まる理由も分かる。 俺はきっと、どんな境遇で出会っても、この人のことが好きになってたんだろうな…。

ともだちにシェアしよう!