187 / 242

第187話

目を覚ますと、目の前に気持ちよさそうに眠る先輩の寝顔。 あんなに幸せだったのが、もしかしたら夢じゃないかと思うと怖くなるけど、抱きしめて感じる温かさも全部本物だ。 「先輩、おはよう。」 まだぐっすり眠っている先輩に挨拶して、唇にキスをする。 乾燥している唇が、俺のキスでしっとりと湿る。 薬局行ってリップクリーム買わないとな…。 昨日だけで荒れかけている先輩の唇を見てそう思う。 多分今日も明日も明後日も、先輩が嫌がるくらいキスしてしまうと思うから。 俺はリップクリーム常備するようになったけど、先輩ってそういうのは本当に無頓着だから、俺がリップケアしてあげないと。 先輩の唇をふにふに触っていると、6時を過ぎていた。 昼ごはんを先に作って冷蔵庫に入れ、朝ごはんにはホットケーキを作る。 匂いで起きてくるかもと思ったけど、よほど疲れていたのか先輩は起きてこなかった。 スーツに着替え、寝室に戻る。 さっきと変わらぬ体勢で、まだ気持ちよさそうに眠っていた。 「いい夢見てますか?」 頭を撫でながら、眠っている先輩に尋ねると、先輩は薄ら目を開いて、俺を見てガバッと上体を上げた。 「はっ…!仕事…!!」 あぁ、俺がスーツ着てるからか。 でも先輩って、週明けまで休んでいいって言われてるって、自分で言ってなかったっけ? それ聞いて安心したんだけどな。 「先輩はお休みしていいんでしょ?」 「でも、迷惑かけるし…。」 「大丈夫。みんな順調ですよ。」 「でも……」 一瞬、またこの人は周りのことばかり気にして…って思ったけど、俺の服の裾を掴んで何か言いたそうにソワソワしてる。 もしかして、俺と一緒にいたいとか…? でも病み上がりの先輩には、できるだけ休んでいてほしいし…。 「定時で終わらせて、ダッシュで帰ってきます。」 「うん……」 「明日から週末だし、先輩はしっかり体休めて?先輩の分までしっかり頑張ってきますから。」 「ありがとう…。」 先輩はニコニコ嬉しそうに笑った。 俺のご都合解釈、あながち間違ってなかったのかも? 「へへ。お礼は体で払って欲しいな〜?」 「か、体っ?!」 先輩はぼぼぼっと顔を赤く染め、顔を逸らした。 ウブかよ。 「キスでいいですよ?もしかして、それ以上のことしてくれるの?」 「っ!!」 先輩の胸元近くに触れながら耳元で囁くと、先輩は勢いよくベッドの隅へ逃げた。 多分これは嫌なんじゃなくて、恥ずかしがってるだけだ。 あー、本当可愛い…。 「冗談です。じゃあ行ってきますね。朝の分の薬は、朝食と一緒に机に置いてますから。」 もう家を出ないと会社に遅刻する。 謹慎明け早々遅刻はさすがに怒られるからな…。 ベッドから立ち上がり、先輩の方へ振り返ると、勢いよく腕が引かれて体勢を崩す。 チュ…と頬に柔らかい感触。 「ありがと。いってらっしゃい…。」 なっ…?!! デレている先輩にニヤニヤが止まらない。 なんで仕事なんだよ!? 行きたくねぇ〜。けど、行かなきゃ…。 先輩の唇に触れるだけのキスをする。 「いってきます♡」 これ以上先輩見てたら、どんどん後ろ髪を引かれそうだから、振り返らずに家を出た。

ともだちにシェアしよう!