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第188話

出社すると、噂が少し広まっているのか、なんだかいつもより多く視線を感じた。 気分悪…。 営業部に入り、まずは挨拶のために部長のデスクへ向かう。 「おはようございます。」 「城崎、ちゃんと反省したか?」 「…………はい。」 「蛇目は今日外回りに行ってもらってるから。おまえは休んでた分しっかり働いてもらうぞ。」 うわ…。 この三日間に溜まった分だけでも多いのに、まだ何か頼んできそうな雰囲気…。 とぼとぼとデスクに戻ると、柳津さんが駆け寄ってきた。 「綾人見つかったって本当か?!」 「はい。本当にありがとうございました。」 先輩が見つかってすぐ、柳津さんには連絡していた。 俺と先輩の二人の時間を邪魔しないよう、家に来るのは控えてくれていたらしい。 「はぁ…、よかった。今は?家にいるのか?」 「はい。だから今日はなるべく早く帰りたくて…。」 「オッケー。全然手伝う。仕事回していいよ。」 「ありがとうございます。でもこれだけじゃなさそうで…。」 「えぇっ?!俺から部長に言っておくよ。」 「いや、でも…」 「気にすんな。ほら、早く帰るんだろ?」 とにかく今は先輩を優先しろってことらしい。 理解ある人が近くにいるのは大事だと実感する。 まだ始業時間には少し早いが、デスクに積まれた仕事を集中してこなしていく。 「しーろーさーきーさんっ!」 「うわっ?!」 「寂しかったですよ〜!」 キーボードを叩いていると、いきなり後ろから衝撃がきた。 振り返ると、にっこにこのちゅんちゅん。 「仕事してんだけど。」 「だって〜。城崎さんも望月さんもいない職場、寂しかったんすよ。」 「あっそ。仕事に集中するいい機会だったんじゃねぇの。」 「逆に気になって集中できませんよ。」 ちゅんちゅんの声は右から左に聞き流し、キーボードを打つ手を再開する。 それでも心が折れないちゅんちゅんは、俺の隣に座ってそのまま話を続けた。 「それより城崎さん、蛇目さんのこと殴ったってマジっすか?」 「…………」 「なんかあったんすか?城崎さんって望月さんのことになると過激派になりますけど、暴力は聞いたことなかったんで気になって。」 「ほっといてくれ。」 やっぱり広まってるらしい。 これで俺に近づいてくる人が減るなら、まぁ悪くはないか…? でも蛇目を殴ったこと、先輩にはできれば知られたくないんだよな…。 ここまで広まってたら、いずれ知られる気がするけど…。 げんなりしながらも、早く帰るために仕事に集中した。

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