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第197話
『ただいまをもちまして、本日の公演を終了致します。お忘れ物のないようお気をつけてお帰りください。またのご来場をお待ち申し上げます。』
終演のアナウンスが流れ、俺はむくりと体を起こす。
隣で横になっている先輩は爆睡。
うん、可愛い。
でもそろそろ起こさないと、次の公演の準備があるだろうしな。
「先輩。せんぱーい。」
「……んん……」
「終わっちゃいましたよ〜。起きて〜。」
「…ぅ……ん…?…………へ??」
先輩はうっすら目を開いて、俺を見てガバッと飛び起きた。
荷物は俺が持ったから、あとは会場から出るだけなんだけど、先輩はなんだか頭の整理が追いついてなさそう。
「ご、ごめん!」
「いいですよ。気持ちよく寝れました?」
「…………ごめんなさい。」
「謝らないで?とりあえず出よっか?」
「う、うん…。」
俺に言われるがまま会場を後にして、近くのソファに座る。
先輩の隣に荷物を置き、自販機で飲み物を買いにいく。
ついでにすぐそばにあった薬局でリップクリームを買って、急いで先輩の元へ戻った。
やっと頭の整理がついたらしい先輩は、青褪めた顔で俺に頭を下げた。
「マジでごめんっ!!寝る気はなかったんだ!!」
「だからいいんですって。先輩にリラックスしてもらうためにプラネタリウム選んだんだから。」
「でも……。ごめん…。」
むしろ眠れるくらいリラックスできてよかったと俺は思ってるんだけどな。
謝んなくていいのに。
そもそも寝て怒るくらいなら、あんなシート選ばないし。
それよりも今寝たから、もう夜までは寝ないよね?
次はホテルに行こうとしてるから…。
家でもいいんだけど、ホテルの方が先輩がいっぱい声出してくれるし、それになんだか積極的な気がするし。
今日はちょっと、キスと兜合わせだけじゃなくて、もう少しだけ先輩に触れたい。
「怒ってないですよ。次行くとこで寝たら怒るかもですけど。」
「次行くとこ…?わかった。寝ない。」
「約束ですよ。」
先輩はこくこくと頷いて俺の手を握った。
スマホで検索すると、ここの近くに結構評判の良さそうなラブホがあった。
うん。まぁここでいいか。
先輩の手を引いて、ショッピングモールから出て10分ほど歩くと目的地に辿り着いた。
「……………」
やべ。引いてる?
真顔でホテルを見つめて固まっている先輩。
なんて言おう…。
「すみません。朝からいっぱい我慢したからご褒美が欲しいです。」
「うっ…。正直でよろしい。」
正直に伝えると、許可が降りた。
これは年下の特権か、それとも恋人の特権か。
シンプルな部屋を選んで、鍵を取る。
「家じゃダメだったのか?」
エレベーターで移動してる間、先輩は不思議そうに尋ねた。
ですよね〜……。
でもここで正直な理由を答えたら、先輩が意識しちゃって声も控えめかもだし、恥ずかしがり屋さんとか天邪鬼が発揮しまくっちゃうかもだし…。
「えー…、あー、我慢できなくて…。」
「ふーん?」
なんとか言い逃れして、話をそらせるように部屋を見つけて中に入った。
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