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第207話

先輩は先に疲れて眠ってしまい、俺は一人で脱衣所に向かう。 下半身が気持ち悪い。 先輩の肌や声、仕草に興奮しないわけがなく、下着はカウパーでぐっしょりと濡れていた。 こんなに我慢したのいつぶりだろうか。 いや、人生で我慢なんて、先輩以外にしたことないかも…。 今日は先輩を愛撫することに徹し、一度も脱がなかった。 それには理由がある。 脱いだら我慢できずに挿れてしまうと思うから。 正直めちゃくちゃ先輩と繋がりたいし、ナカまで全部愛したい。 でも俺はこうして先輩を愛撫してるだけで幸せだし、先輩を怖がらせるようなことだけは絶対にしたくない。 もしセックスして、先輩の体が俺を拒否してしまったら…。 今の幸せな時間を自ら捨てることなんて考えられなくて、俺は先輩に手を出せずにいた。 下着を変え、寝室に戻ると、先輩は気持ちよさそうにスヤスヤ眠っていた。 可愛すぎる…。 この寝顔を見てるだけで俺は幸せ。 だから、これ以上はいいんだ。 俺が我慢すれば済む話なんだ…。 先輩をじっと見つめていると、先輩の目がうっすら開く。 先輩の目が俺を見て嬉しそうに弧を描いた。 それだけでこんなにも愛おしい気持ちになって、幸せで満たされる。 十分じゃないか。 「城崎……?」 「起こしちゃいました?」 「ううん…。一緒に寝よ…。」 「はい。お隣お邪魔しますね。」 先輩の隣に潜り込み、抱きしめて目を閉じる。 俺は寝たいのに、今日一日焦らしに焦らされた俺の下半身はむしろ起き始めていた。 俺の馬鹿野郎…。 トイレで慰めようとベッドから降りようとすると、先輩が俺を抱きしめる。 「あの〜……」 「だめ…。行かないで……」 そんな可愛いおねだりされてベッドから出られるわけもなく、じっとその場で目を閉じて心頭滅却する。 もしかして無理な話だったのか? 俺が耐えるなんて…。 頭の中では分かってても、体が分かってくれなくて辛い。 「先輩…、すぐ戻るから…。」 「嫌…」 俺はなんでベッドに戻ってくる前に抜いてこなかったんだ。 先輩が寝るまで待つしかない。 多分この調子だと、すぐ寝入ると思うし…。 「…………先輩?」 「……………」 規則的な寝息が聞こえてきて、ほっと息を吐く。 先輩の腕から抜け出そうとしたが、俺を抱きしめる力が強くて、抜け出したらまた起こしてしまいそうだ。 やむを得ず、手を伸ばしてティッシュを数枚取った。 「は……っ、……クッ」 眠る先輩に抱きしめられながら自慰行為をする虚しさと背徳感に苛まれながら、俺は溜まっていた欲望を吐き出してゴミ箱に捨てた。

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