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第214話
周りから死角になる場所で、先輩は少し背伸びをして俺の唇にキスをした。
かっわいい……。
「ん…、ん…っ」
「は…っ、先輩……」
「んぅっ♡」
後頭部を支えて舌をねじ込む。
声も可愛い…。
あー、やっぱ仕事行きたくない…。
先輩の脚の間に右脚を滑り込ませる。
少しだけ硬くなっている股間が俺の膝に当たり、刺激されて更に硬度を増した。
「んんっ!んー!!」
「静かに。見られちゃうよ?」
「んふ…っ」
くちゅくちゅ音を立ててキスをしていたら、先輩は俺の肩を叩いた。
弱い弱い。
そんな抵抗で離してあげるわけないのに。
「んぁ…♡…し…ろさきぃ…」
「なーに?」
「遅刻…する……っ」
まだ大丈夫でしょ。
と思いながら腕時計に目をやると、始業時間まであと15分。
でも腕の中で目をとろんとさせて頬を上気させる先輩を、このまま出勤させるわけにもいかない。
「先輩、走れる?」
「……ぇ…?」
「こんな先輩、人前に出せません。だからもう少しここで熱冷ましましょう?」
10分あれば多少余裕はあるはず。
5分間、ただ先輩をじっと抱きしめていた。
少し熱っぽかった吐息も、徐々に普通に戻っていく。
「城崎…、このままじゃマジで遅刻しない…?」
「しますね。」
「しますね、じゃねぇだろ!!」
先輩は俺の肩を突き飛ばして、会社の方へ走って行ってしまった。
俺も先輩の背中を追いかけ、すぐに追いついたけど、そこからは先輩と同じペースで走った。
「はぁ…はぁ…。遅刻するかと思った…。」
「は…ははっ…、先輩のせいですよ。」
朝と言えど、夏。
短距離でも走ったら最後、全身から汗が噴き出してくる。
先輩はおそらく全力で走ったから、俺以上に汗かいてそうだ。
服をパタパタして、汗の匂いが不快なのか顔を歪める。
「先輩、着替え買ってきましょうか?」
「え?」
コンビニにインナーシャツくらいなら売ってると思う。
「シャツはないと思いますけど、インナーくらい売ってるでしょ。」
「頼む…。」
「はい。俺も着替えます。」
先輩を椅子の近くで待たせ、コンビニに向かった。
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