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第215話
インナーシャツ…インナーシャツ……、あった!
Lサイズを2枚購入。
あとは汗拭きシートなども買って、急いで先輩の元へ戻ると、先輩は周りを見渡して不安そうな顔をしていた。
「先輩、お待たせしました。」
「あぁ…、ありがと。」
シャツを渡す時に手が触れて、すると先輩は明らかに動揺した。
なんだ…?
この数分で何かあった?
「何かありました?」
「いや…、俺さ……。」
「うん?」
「無意識に城崎に触ってる…?」
「え?どうしてですか?」
質問の意図も、どうして突然そう思ったのかも理由が分からない。
一瞬俺に対する拒否反応がまた出たのかと焦ったが、どうやらそうではないらしい。
「会社着いてから、なんかすげー視線を感じる気がして…。」
「あ〜………。」
なるほどな。
金曜日の俺が感じていた不快感と同じだ。
今日もたしかに視線が多い。
先輩がいるから気にならなかったけど。
「多分それ、俺のせいです。」
「え?」
「まぁちょっと色々ありまして…。」
"城崎が蛇目を殴った"
はたから見れば、それだけが紛れもない事実。
自分から言いたくはないな。
先輩なら絶対、理由を聞いてくるんだろう。
俺は先輩を傷つけたあいつが許せなかった。
でもきっと、優しい先輩は俺の経歴とか気にして悲しんでしまうから…。
だから、バレないままでいたいな…。
「それより、早く着替えて行かないと!遅刻ですよ!」
「え、あぁ…。」
納得いってなさそうな先輩の腕を引き、トイレに向かう。
先輩が個室に入り、鍵を閉める直前で俺も中に入った。
「なんでだよ!」
「先輩の乳首の無事が心配で…。」
「大丈夫だよ。ほら。」
適当な言い訳を言うと、先輩はシャツを脱いで上裸になる。
あんなに腫れ上がっていた乳首は、ニップレスで覆い隠され、存在を潜めていた。
つーか、エロ……。
下心を今すぐ消したくて円周率を唱えていると、先輩に小突かれる。
「ぶつぶつ言ってないで行くぞ。」
「はーい。」
着替えてスッキリした俺たちは、急いで営業部へ走った。
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