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第219話

会議室から出て、先輩は俺から逃げるように即刻距離を取った。 追いかけても追いかけても逃げられる。 「せんぱ〜い…。ごめんなさいってば…。」 「しばらく来んな。」 「あ!望月さん!」 先輩を追いかけ回していると、俺たちに気づいた喧嘩の元凶が近づいてくる。 どうせバレるなら、自分の口から言いたかったのに…。 この口軽妖怪め…。 「ちゅんちゅん、おいこら。元はと言えば、おまえのそのゆるっゆるな口が全部バラしたから…」 「ひっ…!」 首根っこ掴んで睨みつけると、先輩がぺしんっと俺の尻を叩いた。 痛くはなかったけど、尻なんか叩かれたのいつぶりだろうか。 「こら、城崎。自分が悪いのにちゅんちゅんのせいにしない。」 「すみません…。」 「望月さぁんっ…!」 守ってもらえたのをいいことに、先輩の後ろに隠れるちゅんちゅん。 この小鳥、いつか絶対に丸焼きにしてやる…。 「望月さぁん…、城崎さん怖い…。」 「まぁ、ちゅんちゅんも口の軽さはどうにかしないとだな。」 「えぇ〜?俺、口軽いっすか?」 「うん。すっごく。」 先輩にもそう言われ、不満げな顔のちゅんちゅん。 なんでお前が不満げなんだよ。 「何話してんの?」 「あ、涼真。別に大した話じゃないよ。ちゅんちゅんが口軽いって話。」 わいわいしてたからか、柳津さんが興味津々にやってきた。 本当に大した話じゃない。 「はは。ちゅんちゅんはいい奴だけど、無自覚で信用失いそうだな。」 「えっ?えっ??」 「「同意。」」 「えぇ〜?!!」 柳津さんの言葉にみんな頷くと、ちゅんちゅんは膝から崩れ落ちた。 逆に今まで気づかなかったのがすげぇよ。 周りの奴、何も言わなかったのか? それとも何バラされてもいいような裏表のない奴らばっかり集まってたのか? どうでもいいけど、その口の軽さを見直してくれないと、俺と先輩の関係もすぐに漏れそうだ。 「おはようございます。」 盛り上がっていると聞き覚えのある嫌な声。 これは……。 「蛇目……。」 「主任、お久しぶりです。」 蛇目は先輩に声をかけ、不敵に笑った。 先輩は明らかに動揺していて、俺は先輩を蛇目から守るように二人の間に立った。

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