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第221話
蛇目がこんなことをしたのは、てっきり先輩が好きだからだと思っていた。
俺から蛇目へ乗り換えるようにって。
なのに、イタズラだと?
何言ってんだこいつ、と思ったけど、先輩は何か思い当たる節があったようだ。
「主任に引かれないように言い換えましたけど、私、恋人同士の仲を掻き乱すのが大好きなんです。」
「は…?」
「まぁ元々主任のこと好きなので、別れたら私が慰めて、あわよくばお付き合いしたいとまで想定はしていたんですけどね…。さすが城崎くん、離してくれませんでした。」
先輩はわなわなと震え始めた。
さっきまでは確実に恐怖で震えていたと思う。
でも多分これは怒ってる。
そんでもって、俺も怒ってる。
そんなしょうもない趣味に付き合わされて、俺たちは心身ともに滅入ってたんだぞ?!
それに、あわよくば先輩と付き合うだぁ?
ふざけんな!!!
「俺はもし城崎と別れても、蛇目とは付き合わないからな?!」
「さぁ、どうでしょう?未来のことは誰にも分かりませんよ?」
蛇目は挑発するように言った。
それより先輩。
今なんて言った?
"もし別れても"ってなんだよ?!
「俺と先輩は何があっても、絶っっっ対に別れないですから。」
「言葉の綾だよ。別れないってば。」
「………絶対ね。」
たらればだとしても、別れるなんて嫌だ。
想像の中でも別れたくない。
重いか…?
いや、重くないだろ。
だってお互い好きなんだから。
「だって俺、今回の件で分かったし。……城崎がいねーと俺ダメなんだって。」
「先輩…!」
先輩だって俺を必要としてくれてる。
もう何があっても絶対に離さない。
先輩と離れ離れなんて二度とごめんだ。
「これじゃあ敵に塩を送ったも同じですね…。」
「おかげさまで。」
俺たちのラブラブっぷりを見て呆れたように笑う蛇目にべーっと舌を出す。
俺たちの仲はそんな簡単に壊れない。
壊させてたまるか。
先輩の腕を掴んで、蛇目から距離を取った。
すっげーモヤモヤする。
蛇目の家のベッドで先輩が寝てたってだけでもムカつくのに。
さっきは擬似とか言ってたけど、まさか本物の精液ぶっかけてたとかいうオチだったらマジで許せねぇ。
いや、本物だろうと偽物だろうと許せないけど。
あーやだ…。
誰も俺の先輩に触れないでほしい。
モヤモヤとイライラで、蛇目の話を聞いてからは全然仕事に集中できなかった。
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