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第228話

うーん! 気持ちのいい朝! なんたって、今日は帰って先輩と愛し合う約束したんだもんな〜。 早く仕事おわんねぇかな〜。 まだ仕事が始まってもない…というか出勤すらしていないのに、そんなことを考えている自分が浮かれすぎだという自覚はある。 世界がいつもよりキラキラして見えるんだ。 隣に立って歯磨きしてるだけなのに、先輩がキラキラしてる。 いってきますのキスも、今日は先輩からしてくれて、おまけに舌も入れてくれて、誕生日って最高だと実感する。 ふわふわ浮かれ気分なまま営業部に足を踏み入れた瞬間、パーンッと破裂音とともに何かが俺めがけて飛んできた。 「城崎さーん!誕生日おめでとうございまーすっ!」 驚いて固まっていると、柳津さんがクラッカーを持ってヘラヘラ笑う犯人…、ちゅんちゅんの頭をペシッと叩く。 「こら!危ないだろ!」 「え〜?いいじゃないっすか!城崎さんって、望月さん置いては死ななさそうだし!」 「そういう問題じゃない!」 驚いて固まっていたけど、考えれば考えるほど沸々と怒りが込み上げてきた。 「ちゅんちゅん……」 「なんすか!喜んでくれました?!えへへ〜。城崎さんなら喜んで…ッ」 間抜け面で笑う馬鹿な後輩の頭を鷲掴みにする。 あのクラッカー、もし先輩めがけて飛んでいたらどうなった? 先輩の目に入っていたら?失明したら? 驚きすぎて心臓止まったら? 「先輩に当たったらどうしてくれたんだ?俺が先輩と出勤するって想像つかなかったか?なぁ、答えろよ?」 「いだだだだ!痛い!怖い!!ごめんなさい!!!」 このまま捻り潰してやろうかと、さらに握力を加える。 目に涙を浮かべるちゅんちゅんを見て、先輩と柳津さんが俺を止めに入った。 「本当にすみませんでした…。」 「反省してんのか?」 「今後クラッカーは人に向けて発砲しないと誓います…。」 「謝る相手は?」 「望月さん、すみませんでした。」 「え?俺はいいよ。大丈夫。これから気をつけな。」 ちゅんちゅんは先輩と俺に深々と謝罪し、項垂れてデスクに戻って行った。 「城崎、怒りすぎたんじゃないか?一応祝ってくれたんだし…。」 「先輩に危害を加える者は皆敵です。」 先輩は相変わらず優しいな。 危うく被害被りかけたのに。 まだ憤っている俺の肩を、誰かが後ろからポンっと叩いた。 「まぁまぁ。落ち着けよ。それより、ほら。誕生日プレゼント。」 振り向くと柳津さん。 その手には綺麗に包装された箱。 「何ですか?」 「夫婦茶碗。悪い。もう持ってた?」 「いや、嬉しいです。ありがとうございます。」 夫婦茶碗…。 夫婦……。 「へへ…。夫婦か…。」 先輩と夫婦。 今の感じだと、先輩が夫で俺が嫁? うん、いいな。 「先輩っ!そろそろ始業時間ですよ!」 早く帰りたいと思っていたけど、なんかこの調子だとあっという間に仕事なんか終わってしまいそうだ。 いい気分のまま仕事を開始した。

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