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第234話

力が強すぎて驚いた。 普通に考えれば、先輩だって大人の男なんだから当たり前なんだけど。 先輩は泣きそうな顔で小さく呟いた。 「俺、魅力なくなっちゃったんじゃないかって、すげー不安だったんだからな…。」 「そんなわけないじゃないですか!!いつだって先輩は魅力的で…ッ?!」 「責任とって、今日は全部城崎のにして…。」 先輩はバスローブを脱いで、俺を抱きしめた。 魅力がなくなった…? そんなわけない。 今までも、これからも、先輩はずっと特別で大切で、毎日抱きしめて、全部自分のものにしたいって、俺を醜い独占欲でいっぱいにしてしまうほど魅力的なのに。 不安にさせていた? そう思わせないように、毎日好きだって言葉にして伝えて、先輩が怖がらない方法で愛を伝えて…。 『城崎…、俺のこと好き…?』 昨日の寝る前のやりとりが思い起こされる。 先輩はずっと不安だったんだ。 俺は先輩のためだと思って我慢してきたことはただの独りよがりで、先輩をずっと不安にさせていた。 先輩を全力で抱きしめて、大きな声で決意表明する。 「大切にします!!!」 「い、痛い…」 「不安な思いさせてごめん。でも、俺すげー我慢してたから…。今日は何言ってもやめてあげられないです。」 先に言い訳を述べると、先輩は嬉しそうに笑った。 「城崎だけじゃないから。俺だって我慢してた。」 「愛してる。」 俺もバスローブを脱ぎ、もう一度先輩を抱きしめた。 直接肌が重なりあい、先輩の体温をもっと近くに感じる。 肌が溶け合うみたいに、お互いの体温を感じ合う。 「城崎…っ、キスして…」 「先輩…、ん、愛してるよ…。愛してる…」 「ふ…ぅっ…」 深く味わうようにキスをする。 唇を離すたびに目が合って、先輩は照れながらも俺から視線を逸らすことはなかった。 「先輩、もう俺が世界一愛してる人、誰か分かるよね?」 「ぅ…、俺……?」 「正解。」 ネガティブすぎる先輩でも自覚するくらいには愛を注いでいるつもり。 これからもずっと。 ちゃんと分かってくれてるみたいでよかった。 「一つお願いがあるんですけど…」 「何?」 ずっといつ切り出すか迷っていた。 俺の誕生日。 お願いするにはちょうどいい機会なのかもしれない。 先輩の耳に口を寄せ、溢れんばかりの愛しさも全部一言に詰め込んで囁いた。 「綾人」 先輩の名前。 いつかはそう呼びたかった。 そのいつかを、いつ切り出すか。 記念日は色々あったし、今日にして正解だったかも。 「〜〜っ?!!」 「これからそう呼んでもいいですか?」 先輩は耳を両手で隠し、顔を真っ赤にして後ずさった。

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