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第16話

「寒く無いように着込んで。夕方は暗くなるのが早いですから、子供達は16:00には戻るように。」 その日は、街のゴミを拾う活動をする日だった。 秋の夜は早い。 すぐに暗くなるから子供達は1人ではいけないと、大人と子供がセットで回る事になった。 ランゲとは、もちろん別々の区域を回る。 …これで、少しは…。 だが、信者と朗らかに話していても胸もペニスもジンジンと鎮まらず、体格の良い男を見れば股間に目が行ってしまう始末。 いけないと腹に力を入れれば後口に精が滲み、尻の穴をキュッと閉めれば腹の奥の空白を感じる。 神よ…。 ミハエルは祈りながらゴミを拾った。 夕方。 「そろそろ貴方は戻らなければ。あと少しだけだから、私は全部回ってしまいます。そうだね、暖かいスープが飲みたいね。」 子供を先に帰して、さあ、あと少しだと、寒さに冷え、落ち着いてきた体にホッとした頃だった。 「あ、あ、ああの、神父様…。」 急に背後から声をかけられた。 振り返ると、気の弱そうな小柄な青年がいた。 「ぼ、僕の悩みを、きき聞いて欲しいんですが…。」 緊張を隠せもせずに、顔を真っ赤にしている。 ミハエルはいつもの慈悲深い微笑みで、その男に向かう。 「ええ、いつでも神の家の門は開かれています。どうしましたか。」 「あの、こっここここでは少し人目が…、、あ、あの、ぼ僕の店でもいいですか?」 男は目をキョドキョドと彷徨わせながら、ギュッと太腿あたりの布を握りしめ、息も荒く、泣きそうに見えた。 神よ…。 人と話すのが苦手な人は多くいる。 これほど震えて、哀れな…。 「ええ、もちろんです。さあ、行きましょう。」 ミハエルは緊張を解くように優しく微笑んで、後に続いた。 細く暗く汚い路地を抜け、地下への階段を降りる。 このあたりも清掃しなければいけないな…。 そんな事を思いながら開けられたドアをくぐると、小さな酒場だった。 バタン!!ガチャ! 背後でドアが閉まり、鍵も掛けられた。 治安も良くないのだろうし、まだ開店の時間ではないのだから当たり前か…。 「し、神父様、こ、こちらです。」 暗く狭い廊下は汚れた匂いがしていて、何処からか話し声もする。 壁は薄そうだもの…。 男がドアを開けた。 ミハエルが薄暗い部屋に入ると、バタン!と外からドアが閉められた。 「あ、あの…。」 ガチャリ… 静かに鍵を掛ける音が響いた。 ……、閉じ込め、られ… 「神父様、ようこそ。」 理解すると同時に聞こえた声に、ミハエルはパッと振り向く。 嫌な目つきをした3人の男が、ニヤニヤとしながらマットレスだけのベッドを囲んでいる。 他の出口も窓も無く、ドアノブを回しても、鍵を掛けられてはどうしようもない。 「そう怖がらねえでくれよ。神様がついてになさるんだろう?」 「あ、あの、わ、私は、悩みを、き、聞いて欲しいと、言われて…。」 「ええ、そうなんです、悩みを聞いて欲しいんです。ここは椅子が無いので、こちらへどうぞ…。」 「わ、私は、立ったままで、問題ありません…。で、では、お、お悩みを伺います。」 「お高い神父様は貧乏人と同じ目線が嫌なんじゃねえのか?」 「風呂にも入れねえ程貧乏だからって、やっぱり聞いてくれねえんだろ。」 「ああ、ミハエル神父様ならお救い下さると思ったが、神に祈るにも祈り方すら知らねえ俺達にゃあ、救いはねえんだとよ。」 ミハエルに選択肢は無かった。 「い、いえ、そんな、事は…。か、神は全ての人に同様に救いをお与えになります。わ、分かりました。では…、失礼致します。」 ミハエルは男達がいるベッドへと腰掛ける。 それをニヤニヤと舐め回すように見ながら、男達はミハエルを囲んだ。 「お、お悩みを、お伺い致します。」 「神父様、俺の悩みはこれです。」 目の前の男が、下衣を下履きごとベロリとめくった。 不潔な匂いのするものが、ボロリとミハエルの顔の前に出された。 「どうも何してもおさまらなくてなあ。神父様になんとかして貰おうと思ったのよ。」 「神父様、天国へようこそ。」

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