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第24話

「……、、。」 ミハエルが気が付くと、真っ暗な闇の中にいた。 暖かい、優しい闇だ。 「……、、っ、……ラン…ゲ…?」 「……、ミ、ミハエル…、、、ミハエル…ミハエル!!…お、お前…、あああ、あああああ…!!ミハエル…。」 ランゲが滂沱の涙を流していた。 「ああ、ランゲ…。私は…、力を使い切ってしまって…。」 「…そう、かっ、お、俺は…、俺は…。」 ミハエルは角の生えた頭を撫で、涙で濡れた頬を撫でる。 姿は相変わらず異形だとしても、その懐かしい魂は愛する者のそれだ。 湧き上がるこの気持ちは、喜びという言葉などでは表しきれない。 「ランゲ…、貴方に会いたかった。愛してる、ランゲ…。」 「ミハエル…、ああ、愛してる。愛してる、ミハエル…。」 おいおいと泣くランゲの声とミハエルのなだめる声が、闇の中に響いていた。   轟々という風はピタリとやみ、海はゆっくりと流れ出した。 ーーーーーーーーーーーー ミハエルとランゲは教会へ戻った。 ランゲの大きなベッドで、大きな布団に包まって、体を擦り付け合うように抱きしめ合う。 「ランゲ、私は…貴方をこのベッドでずっと待っていました。貴方が来てくれる事は無いと分かっていても 私はここにいるしか無かった。貴方と繋がる唯一の場所だから。」 「ずっと見ていた。その涙を拭えなくて、とても苦しかった。魂が引き裂かれている痛みだ。それでも、お前の側に行くのが恐ろしかった。すまない、ミハエル、もうお前の涙は全て俺のものだ。」 キツく、キツく抱きしめられて、嬉しくて、嬉しくて堪らない。 「ランゲ…、私、会いたくて、会いたくて…、貴方に、会いたくて…。神に祈ったんです。そうしたら、こうして叶えてくれた。私は神を信じています。」 涙が止まらない。 涙を拭われ、顔中に優しい口付けが降る。 「俺も少し考えた。ミハエル、出会った時を覚えているかい?あれこそ、神に感謝すべき事だった。あの一瞬が無ければ、俺はお前と愛し合う事さえなかった。神が俺達を引き合わせた。」 「ランゲ…、あの時、貴方はなんて言ったか覚えてる?」 「ああ、早く何処かへ行けと言った。俺はこれ以上戦えないと、限界だと思っていた。お前はまだ小さな神だった。」 「そう、私は傷付いた貴方を助けようと思ったのに、結局アチラに見つかって、貴方はもっと傷ついてしまった。」 「小さなお前を守ろうと必死で戦ったんだ。お前がいなければ死んでいた。瀕死の俺を小さな手で付きっきりで介抱してくれた。」 「あの時から、とても怖かった。貴方を喪うのが。 私には今も昔も貴方しかいなかったから。私のランゲ、ああ、ランゲ…、、ランゲ、もう、待てない…。」 ミハエルがランゲに口付けた。 ランゲが我慢できる筈もない。 すぐに深い口付けで答え、腕をニョキニョキと生やす。 ランゲはもう愛しい名前しか口から吐かれないかのようにその名を呼んで、暗闇にその愛しい形を現していくかのように全身をまさぐった。 ミハエルは嬉しさに体を朱に染めて、逞しい筋肉をなぞり、口付けを繰り返す。 もっと…、もっと…。 後口からジワリと淫液が滲むのを感じた。 ああ、貴方に欲情されている…。 そんな事すら嬉しくて、ランゲの目の前で濡れたそこに指を這わした。 しばらく何にも触れられなかったそこが途端にジンジンと疼き出して、しとどに濡れた音を立て始める。 「ミハエル…、、可愛い、ミハエル。」 「ああ、ランゲ、ランゲ、あう、あ、ランゲ…うん。」 グチグチと音を立てて舌を奥に入れられる。 腰がカクカクと揺れて、目の前のペニスに舌を這わし、飲み込んでゆく事さえ喜びだ。 「ミハエル…、ああ、こんなに濡らして、もっと奥までお前と繋がりたい。」 「ラ、ランゲ、は、やく…早く、ここ…。」 ミハエルがランゲの上に這いながら、指先で後口を広げた。 滴る蜜をひと舐めして、ランゲが目を細めた。 するりとミハエルの下から脱したランゲが、背後から腰を撫で、ペニスを優しく扱き、乳首を転がす。 上体を起こし顔をコチラに向けさせて、目を覗き込みながら口付ける。 くぷくぷと様子を確かめるように押し付けられる熱の塊。 それを咥え込もうと、ミハエルは必死に腰を揺らして、圧を掛ける。 ズブ、ズブ…、 少しずつ入り込むソレが、愛しくて堪らない。 涙を流し、舌を喉の奥深くまで誘い、角を撫で、もっとと強請る。 ペニスと袋を優しく揉まれ、乳首をコリコリと捩られ、シコリをグリグリと擦りあげられる快感に身悶えながら、舌を甘噛みし、体を震わせた。 トチュトチュと奥が優しく引き伸ばされて、そして、そこが少しずつ開いてゆく幸せ。 もっと…、もっと……。 グブグブ…ゴチュン!! プシュウ…、シュ…、シュウ…。 喉の奥深くまで入り込む口付けに嬌声さえも上げられないまま、震える足を優しく撫でられ、その快感に身を委ねていく。 高く放り投げられるような、深く沈むような絶頂。 朱く染まり震える体から、苦しそうに寄せられた眉。 それでも、 「ランゲ、、も、っと…、、あっああっ、もっと…。」 「ミハエル、やっとお前を取り戻した。もうずっとこのまま離れない。ミハエル、愛してる。」 パンパンパンパン、ズパン!! 「あああっ、あん、あっ、いく、ああ、いく、ーーー!!」 ドプン!ビュ…ドク、ドク…、 腹の奥に熱い欲が叩きつけられた。 快感で目の前が真っ白になる。 「もっ、と…。」 「ミハエル…、ミハエル…。」 ドチュ、ドチュ、グヌグヌ、ゴッチュン!! 「ッ…、、ヒャアアーーーグ、ウッーー、フウン!」 もっと…。 ……もっ、と……。 明け方。 大きなベッドで、2人は事後の気怠い疲れと至福の時を過ごしていた。 背筋に舌を這わされると、砕けた腰さえ震える。 甘い余韻が体を簡単に再燃させて、涙と共に何度強請ったことか…。 ハァ…、、 「嵐華…、何故私の前から姿を消したのですか。私の絶望は海の停滞。あの攫われた時だって、私は絶望などしなかった。貴方にはもう会えないと知って、私が、どれだけ…。」 頬を撫でる手を、ギュッと抱きしめる。 「ミハエル…、お前は人々の為、仕方なく俺の言う事を聞いていた。もしかして今までも俺の力が必要だから、それか、俺の力を抑える為に俺の側にいたのではと。」 「相変わらず馬鹿な人ですね。貴方は私がいないと力を全てばら撒いてしまうから、私がまとめて海を流すのに使っているだけ。貴方は私の力が必要だから私と共にあるのですか?」 「違う!お前の力が無くとも、俺はお前と共にありたい。」 「私もです、嵐華…、私の嵐華。私の魂の半分はここに大切にしまわれているでしょう?貴方の魂の半分はここにある。 貴方は私が根負けするまで、私の側にいなければならなかったんです。 私は嫉妬で狂いそうだっだけど。」 「嫉妬?」 「そう…、嫉妬。」 「……?」 「ふふ、……もし、貴方を愛してると言った私が、他の男の名を愛しそうに呼んだら、どうする。」 「ほ、他の…男?」 ランゲがピタリと動きを止めた。 目だけがキョロキョロと忙しなく動く。 「そう、その人を深く愛していたら?」 ミハエルが更に言葉を重ねれば、口が引き結ばれ、怒りが湧き上がったのを感じる。 「他の、男…。…、こ、殺す、…殺してやる、そんな…、、、」 「ランゲ、もしその人が既に死んでいたら?私がまだその人を忘れられないで愛していたら?」 今度は眉尻を下げて、泣きそうな顔だ。 「……、、そんな男がいるのか…、ミハエル。」 「ランゲ、それは、私ではなく、貴方が私にした事です。」 「何を、お、俺は、お前を愛してる。お前だけだ。信じてくれ。」 「ふふ、分かってます。私はそんな嫉妬に縛られて、貴方を愛してると言えなかったという事です。」 「驚かすな…、ミハエル。…お前、本当に他に好きな男はいないのか。女でもだ。」 「馬鹿な人だ。貴方の魂を持って、他の人を愛せる訳がない。」 「そうだ、そうだな。ところで、何に嫉妬したんだ。」 ミハエルが、はあとため息を吐いた。 「もう、貴方は…。私はアウナミに嫉妬したのですよ。」 「……自分に、か?」 だから、とミハエルは我慢強く説明する。 「私にはアウナミの記憶が無かった。アウナミは見知らぬ他人だ。そこへ貴方が愛しそうにアウナミと言うから…。」 「ああ、ミハエル、すまない…。だが…、、…すまない…。」 「ふふ、分かってくれればいいんだ。罰として、貴方は私の側から離れてはいけない。いっときもだ。」 「ああ、わかった。ミハエル…、ミハエル。」 粗末なカーテンが、陽の光を受けて眩しく輝いた。 今日も天気がいいらしい。 やっと落ち着いたランゲの性欲がぶり返さぬうちに、ミハエルはさあ仕事だと布団から抜け出した。 「今日は夏野菜の苗を植えよう。子供達はピーマンは嫌いから少しだけ。きゅうりとトマトとナス…、メロンは今年は上手く出来るといいけど…。」 「はあ、さっきまで腰が立たない程だったんだ。無理はダメだ。俺がやるから座りながら草むしりを頼むよ。」 「ランゲ…、ありがとう。ふふ、愛してる。」 「ああ、ミハエル…、君は俺を動かすのが上手いね。いつの間にそんな小悪魔のようになったんだい?」 「悪魔の側にいたからかな。似て来たようだね。」 「全く…。さあ、まずはお茶を飲んで、その間に髪を梳かしてあげよう。」

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