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入院日

「来ちゃった…怖いな」 睦月は入院受付待ち合いの椅子に座り看護師が来るのを待っていた。 手にはこの間の説明書と入院バック、その手は震え落ち着かなかった。 エレベーターが開き 「お待たせしました。江東さんですか?念の為フルネームと誕生日をお願いします」 中から男性看護師が出てきて睦月に尋ねた。睦月は頷き 「江東睦月1月1日生まれ」 質問に答えた。 「ありがとうございます」 看護師はリストバンドを睦月の前に差し出し 「誤認防止用のバンドです。つけますね」 「はい」 「じゃあ行きましょう」 エレベーターに入ると看護師はカードキーをかざし最上階のボタンを押した 「病棟は最上階です。残念ながらカードキーなしでは入棟できないです。中の子たちを守るためなのでご理解ください」 「え?じゃあ外出とか売店は?」 「看護師がついていきます。万が一があるといけないので」 看護師は説明を続けた。 「急にヒートに入ってαに襲われるΩがたまーにいるんです」 エレベーターが開くとそこはもう病棟で右と左にそれぞれナースステーションがあり、左右に分かれて病室があるようでちらほらと患者が歩いていた。 「みんな…Ω?」 「こっちのフロアはね。隣にはαとβの子たちが入院してます。ちなみにここの看護師はみんなβで、自分は(さかき)と言います。一応受け持ちなのでよろしくお願いします」 「あ、はいこちらこそ」 睦月は小さな動作でお辞儀をした 「病棟をぐるっと周りましょうか?」 榊はステーションの奥を指差し首を傾げた 「お願いします」 「ステーションの横にあるのが処置室と保護室が3つ。保護室は激しくヒートに入っちゃった子を守るためにあります。明日睦月くんが入る部屋なので場所を覚えておいてください」 「は…はい」 「大丈夫。怖くないので…一番安全な部屋だと思ってください。で、ずらっとおとこのこの病室が並んで中央までくると談話室があって風呂場が2つあります。これはステーションで順番をとってね?そしてまた病室。こっちはおんなのこです」 「食堂的なのは無い感じ?」 「食事は部屋に運んでる。返却はステーションにね」 「へぇ…もっとなんか合宿みたいのかと?」 「デリケートな問題を扱う病棟だからね」 「…ぅあ…っあっ!体が…ったすけてーっ」 「助ける。助けるから落ち着いて!」 取り乱した少年がステーションで暴れていた 慌てて榊はステーションに入り状況を尋ねた 「どうした」 「ヒートです!」 「抑制剤は」 「それが暴れてて打てません」 「自分が!」 榊は注射器を受け取り少年に注射をし、崩れ落ちる少年を榊は支えた 「ドクター報告して、とりあえず処置室へ。必要があれば保護室の指示もらってください」 「はい」 その光景に睦月は驚き言葉も出せないでいた。

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