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第八話 有翼人の羽根の有効活用【後編】
「それで枕作るのか?どうするんだこんなに」
「里のみんなに配ろうと思って」
「あ、なるほどな。そっか。よかったな羽根燃やす前で」
「燃やす?燃やすって火でか?有翼人の羽根は燃えにくいだろ」
「金剛がやってくれてるよ。ある程度溜まったらすり潰して粉にして燃やすの」
「だがいいのか?その、なんだ。立珂を道具として利用するような気にならんか」
「ならないならない。羊獣人が自分の毛売るみたいなもんだよ」
「……お前が良いならいい。だが無理に礼を尽くそうなどとせんでいいからな」
「うん」
金剛は心配そうな顔をして立珂を撫でた。
この里に有翼人はいないし、詳しい者もいない。孔雀が多少羽の仕組を知っている程度で、生活ぶりがどうかまでは知らないらしい。
だが立珂はふんふんと鼻歌を歌いながら布で作った枕の袋に羽根を詰めていく。
「みんな喜んでくれるかなあ」
「喜ぶに決まってるさ。こんな気持ちの良い枕は初めてだからな」
「えへへ。これからは燃やさないで何か作ろうね」
立珂と慶都はきゃっきゃとはしゃぎながらどんどん羽根を詰めていく。
「俺縫ってみたい!かーちゃん!縫い方教えて!」
「はいはい」
羽根を詰めた袋を縫い合わせれば枕になる。
慶都の母がすいすいと縫っていくけれど、慶都がはしゃぐせいで針がかすめて血が出ていた。慶都はごめんと謝りながら、血のにじむ指をぺろっと舐めて美味しいなどと言ってきゃらきゃらと笑っている。
天藍と金剛も縫い合わせて枕になり、最終的には十五個が完成した。これがちょうど里の人数だ。
後で配りに行こうと立珂はとても嬉しそうにしていて、薄珂も思わず嬉しくなった。
立珂の幸せは薄珂の悲願だ。それがこの数日で次から次へと叶っていて、薄珂の胸はじいんと熱くなった。
そんな幸せを噛みしめ立珂を見つめる薄珂だったが、視界の横からにゅっと羽根枕が現れた。
「うわ!何!?」
「はい、これ」
枕を差し出してきたのは天藍で、手にしている枕は天藍が作った物だ。
「何?配るんでしょ?」
「いや。これは薄珂のために作った」
「えっ!?」
「薄珂も作ってくれよ。俺も生活用品揃えないといけないからさ」
「え?」
「ん?」
薄珂ははたと不思議に感じた。
生活用品を揃えるということはここで生活をするということだ。だが天藍は蛍宮への入国が許可されたら出て行ってしまう。それなのに何故睡眠に必要な枕を欲しがるのだろう。
(……もしかして、ずっといるってこと?)
聞きたい。けれどそれを言葉にはできなかった。聞いたら出て行くことを宣言されてしまうかもしれない。
薄珂の心臓はどくどくと脈打った。
「作ってくれる?」
「……うん。じゃあ、これね」
薄珂はまだ縫い合わせていない枕を手に取り丁寧に針を通した。しっかりと縫い合わせて完成した枕を天藍に渡すと、にこりと微笑み返してくれる。
「有難う。今日からこれで寝るよ」
「うん……」
行かないよね、とも行かないで、とも言えなかった。
今はまだ希望を持っていたかったから。
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