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Episode1・クロードと二人のにーさま36
「ハウスト、あなたも見ましたよね。クロードが怪我をしていました」
「転んだだけだ」
「あんなに血がでて……」
「かすり傷だっただろ。ちょっとだちょっと」
「ああ可哀想に。きっと痛かったでしょうね」
「本人はさっきまで気付いてなかったみたいだぞ」
「クロードは痛みを耐えて戦ったのですね。苦難の果てに得た勝利です」
「そんな死闘だったのか?」
私の横でハウストが首を傾げています。
目を据わらせてしまう。私は事前にぐずぐず宣言までしたのに、さっきからいちいち突っ込んでなんなんですか。
じろりっ、とハウストを見つめます。
目が合うとハウストは少し面倒くさそうな顔をしましたが、ダメです。逃がしてあげません。
「立派な死闘です。五歳のクロードががんばったのですから大変な激戦だったのです。そしてクロードは勝ち抜いてくれました」
「……そういう感じか」
「そういう感じです」
きっぱり言い切ってやりました。
クロードが望んでいた覚醒とまではいきませんでしたが、それは急ぐものではないのです。私はクロードが自信を取り戻してくれただけで充分でした。
そんな私の言い分にハウストは苦笑しながらも観念してくれます。
「分かった。そういう感じだな、覚えておこう」
「はい、覚えておいてください」
私もうんうん頷いて納得しました。
私はふっと笑んで、ハウストの隣にスススッと近づきます。
そしてハウストの腕にそっと手を掛けました。
そんな私にハウストが面白そうに目を細めます。
「もう心配はいいのか?」
「おかげさまで少しスッキリしました。ふふふ、ありがとうございます」
「俺だけが知っているお前だ。悪くない」
「そんなに甘やかさないでください。調子に乗ってしまいます」
「調子に乗ってもいいぞ」
「嬉しいことを」
私はハウストを見上げて笑いかけました。
するとハウストがそっと目元に口付けてくれます。
あなたしか知らない私がいるように、私しか知らないあなたがいます。これって幸せなことですね。
こうして二人でいると、ふと先に行っていたはずのクロードが戻ってきました。
「ちちうえ、ブレイラ、なにしてるんですか! おそいです!」
しかもちょっとプンプンして呼ばれてしまう。
どうやらお待たせしていたようですね。
「すみません、すぐ行きます」
私が手を振って答えると、クロードは「はやくきてくださいね!」とまた居間に走っていきます。
クロードは私とハウストを呼びにきたものの、にーさま達と一緒にいたい気持ちもあって大忙しですね。子どもはいつも忙しそうに駆けています。イスラもゼロスも幼い頃はそうでした。
「ハウスト、私たちも行きましょう」
「ああ」
私とハウストは並んで居間へと向かいます。
そこには私たちの三人の息子が待っていますから。
終わり
クロード中心の話しでした。
五歳に成長したクロードを書けて楽しかったです。五歳クロード初書きでしたから。
次は『Episode2・冥王ゼロスは修業中にて』です。
ゼロス中心で四界会議と家族で海遊びとか、そんな感じです。
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