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Episode2・冥王ゼロスは修業中にて42

「あの、ほんとにするんですか?」 「します。ここにイスラにーさま、こっちにゼロスにーさま、わたしはここです」  クロードは模造紙に庭園の地図を描いて、真剣な顔でそこににーさま達を配置していきます。  どうやら襲撃現場は庭園にするようですね。しかもにーさま達は絶対に自分の味方をしてくれると信じて疑っていません。  こうしてクロードは真剣に作戦を立てていきます。軟禁部屋の前にテーブルを置いて模造紙を広げるクロードと、廊下の前で正座している私。この光景に通りかかった士官や女官がびっくりした顔をしていました。  私は真剣なクロードを見守っていましたが、ふとテーブルのノートに気付きます。 「クロード、そのノートはなんですか?」 「あ、これはチェックノートです。かいすいよくはげんきじゃないとダメなんで、チェックしてるんです」 「元気じゃないとダメ?」  なんのことを言ってるんでしょうか。よく分からないけれど気になります。 「見せてもらってもいいですか?」 「どうぞ」 「ありがとうございます」  女官を挟んでノートを受け取ります。  直接受け取れないのも軟禁中の不便なところですね。  私は受け取ったノートを開く。そこに記入していたのは家族の起床時間、食事時間、睡眠時間、他にもその日の食事量や様子など。感想欄には『ゼロスにーさま、ごはんいっぱいたべてました。』とか『ちちうえ、おしごといそがしそうでした。』とか『イスラにーさま、よるまでおしごと。しんぱいです』とか『ブレイラはきょうもニコニコしてました』まで書かれています。それはまさに家族の健康チェックノート!  どうしてこんなチェックを……?  不思議に思って首を傾げましたが、……ああこの子は。  私はクロードを見つめます。  今のクロードは「ちちうえぇ~、ゆるせませんっ」とぶつぶつ言いながら父上討伐作戦を練っています。  でもね、でも。 「クロード」 「なんですか?」 「父上をやっつけるんですか?」 「やっつけますっ。にーさまたちといっしょならたおせますっ」 「そうですね。でも倒してしまったら父上と一緒に海水浴できませんよ?」 「あっ!」  クロードがハッとした顔をしました。  どうやら今気付いたようです。 「わ、わたしはどうすればっ……」  クロードが苦悩しだします。  父上はやっつけたいけれど、父上とも海水浴がしたいのです。  私はそっと笑いかける。 「みんなで海水浴、楽しみですね」 「ブレイラもたのしみなんですか!?」 「はい、私もずっと楽しみにしているんです。クロードがこうしてチェックしてくれていたので安心しました」  そう言うとチェックノートをペラペラめくって確認します。 「うんうんなるほど、みんな元気ですね。これならみんなで海水浴ができます」 「!? ほ、ほんとですか!? だいじょうぶですか!?」  ガタンッ! クロードが興奮で椅子から立ち上がりました。  勢いに押されつつも私は大きく頷きます。 「はい、クロードのチェックノートが役に立ちました。あなたのおかげです」 「やっぱり! わたし、いるとおもったんです! かいすいよくするなら、ちゃんとチェックしないととおもって、かんぺきにチェックしてました!」  クロードは興奮した口調で教えてくれました。  家族で海水浴をするのが楽しみでずっと頑張ってくれていたのですね。

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