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Episode3・うららかな昼下がり、北離宮の主人は21

 こうして個人戦トーナメントが終わりました。  仰向けで倒れていたリオもむくりっと起き上がって、ハーラルトになにやら話しかけています。ハーラルトもムスッとした顔で答えて、ちょっとした言い合いのようになっていました。離れているので聞こえませんが、きっとお互いの健闘を称えあっているのでしょう。こういうのを青春というのでしょうか、学校とは素晴らしい場所ですね。 「リオはこのあと団体戦にも出るんですよね。大丈夫そうでしょうか」  心配する私にゼロスが教えてくれます。 「それなら大丈夫だよ。受け身が甘くてちょっと気を失ってただけだから。ダメージもそんなに残ってない」 「そうですか、それなら少し安心しました。お見舞いに行きたいですが、それは難しいですからね」 「まあね」  個人戦が終わると次は団体戦のトーナメントが始まります。  でも団体戦が始まる前に闘技舞台の整備作業が始まりました。そして円形の舞台をぐるりと囲むように教師と上級生が配置されます。それは観覧席を守るためでした。  明らかに個人戦の時より配置人数が増やされ厳重警戒になります。 「この守りは団体戦のためですね」  今までとは違った物々しい光景に緊張を覚えているとコレットが教えてくれます。 「はい、団体戦は七対七の戦いです。十四人の戦闘になりますので、防壁はより強力なものになります」 「それほどに団体戦は激しい戦闘になるのですね」  コレットの説明に頷きました。  準決勝に残った十四人分の魔力を防壁で抑えるのですから、それ以上の人数を配置する必要がありますからね。  私がコレットから説明を聞いていると、その横ではゼロスが椅子に座って足を組んでいます。準備中なので完全にリラックスモードです。 「楽しみだなあ~。クロード、ここは特等席だからよく見えるよ。団体戦の大事なとこをしっかり見ておくようにね」 「だいじなところですか?」 「そう。個人戦は個人の力量が左右するけど団体戦はそうじゃない。統率と連携だ。みんなで力を合わせてがんばろーってことだよ」 「せんじゅつとか、そういうことですか?」 「うん、まあそんなとこ。団体の作戦行動を成功させるのは司令官の腕のみせどころだからね。もちろん最後にものを言うのは個人の力量ってパターンも多いけど、個人の力量頼みになった時は作戦行動がほぼ失敗した時だ」 「それじゃあ、つよいひとたちがあつまって、かしこいしれいかんがいるのが、だいじっていうことですね」 「そうそう。特に軍隊はそうやって機能する。クロードはしっかり覚えといて」 「はいっ」  クロードは頷いて真剣な顔で整備中の闘技場を見つめます。  そうですね。クロードはいずれ魔王の玉座に座る子どもです。魔王は魔界の軍隊の最高司令官でもありました。  今は勇者と冥王の兄たちの周りをうろちょろしたり甘えたりしているクロードですが、ゆくゆくは立派な魔王になるのです。 「では今から団体戦トーナメント準決勝を始めます。チーム入場です!」  司会者が団体戦開始を告げました。  準決勝に残っているのは四チーム。そこから決勝に勝ち上がれるのは二チームだけです。 「あ、リオとルカのいるチームが出てきましたよ」 「わあ、たいせんあいてもつよそうですね」  クロードが対戦相手のチームを見て目を丸めました。  対戦相手の七人は剣術、召喚術、体術、攻撃魔法などそれぞれ特化した得意分野がある七人でした。おそらくこの団体戦のために最高の人材を集めたのでしょう。  それに比べてリオとルカのチームは普通です。しかも準決勝のぎりぎりまで作戦を話しあっていたようで、一人がルカに最終確認をしているくらい。団体戦にでるためだけに急遽寄せ集めたようですね……。 「リオとルカはどうしても団体戦に出場したかったみたいだね」  ゼロスが苦笑して言いました。  どうやらチーム内のパワーバランスも微妙なようです。リオとルカの魔力は突然変異レベルのものですが、それ以外の五人は特に計画性もなく集められたようです。  そして司会者の号令で準決勝が始まりました。  でも勝負がつくまでにそれほど時間はかかりませんでした。もちろん勝ったのはリオとルカがいるチームです。 「あっという間でしたね……」  びっくりしました。あまりにも早く勝負がついたのです。  それにはクロードも驚いて目を丸めていました。  そう、リオとルカが強すぎたのです。チームメイトの補助もありましたが、やはりリオとルカの力がひと際抜き出ていました。  対戦相手の七人も準決勝に残っているだけあって戦闘力は高いのですが、リオとルカの力はそれ以上だったのです。 「さすがですね。リオとルカは個人戦でも強かったですが、二人の力を合わせるとさらに強くなるようです」 「うん。異形の怪物を召喚した時も二人の魔力を合わせていたからね。二人で連携すると魔力が呼応しあうみたいに倍増するみたいだ。さすが双子」  ゼロスも感心したように言いました。  そうしている間にも、もう一つの準決勝が始まります。  次はレベッカのいるチームと強力な攻撃魔法を得意としたチームの対戦でした。  でもこちらの方も圧倒的な力で早々に勝負がついてしまいます。勝ったのはレベッカのチームです。 「コレット、レベッカが決勝に残りましたよ。あなたの親戚はすごいですね」 「ブレイラ様にそのようにおっしゃっていただけるのは畏れ多いことです。レベッカは未熟な学生ですから」 「ふふふ、またそんなことを言って。次の対戦はリオとルカのいるチームです。楽しみですね」  リオとルカのいるチームとレベッカが率いるチーム。  この二つのチームは素人の私から見ても他のチームとは別格でした。決勝戦が楽しみです。

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