121 / 133

Episode3・うららかな昼下がり、北離宮の主人は22

「それでは団体戦の決勝を行ないます! チーム入場!!」  司会者が決勝を進行しました。  団体戦は七対七。闘技場の舞台に十四人の出場者が整列します。  私ははらはらした心地で舞台を見守っていました。 「見ているだけなのに私まで緊張します。この勝負、ゼロスはどう思いますか?」 「うーん、どっちが勝ってもおかしくないかな。レベッカの統率力が勝つか、リオとルカの個人能力が勝つか」  ゼロスが面白そうに言いました。  聞いていたクロードも興味津々に答えてくれます。 「わたしはレベッカのチームだとおもいます」 「おや、その根拠は?」 「これはチームでたたかうからです! レベッカはせんじゅつがじょうずでした!」 「なるほど、そういう事ですか」  統率力の優れたレベッカの戦略や戦術は見事なものです。  リオやルカは突出した魔力の持ち主ですが、レベッカの統率力なら攻略できる可能性があるということですね。 「クロードは戦術の講義もがんばってるんだね。よく考えてるよ」 「かんぺきにおぼえてます」  クロードが誇らしげに言いました。  しっかりお勉強しているのですね。 「さあ始まりましたね」  舞台では団体戦の決勝が始まりました。  レベッカのチームは見事な作戦行動を繰り広げ、レベッカの指揮下で個々の能力が最大限に発揮されています。意図的に発揮できる状況を作り出しているようでした。 「すごいですね。レベッカはまるで先を読んでいるかのようです」 「リオとルカはだいぶ苦戦しているようだね」  リオとルカのチームは連携をことごとく阻止されていました。  リオとルカを中心にして纏まっていますが、どうしても組織力に欠けるのです。また、リオとルカが攻撃の中心になることも読まれているので対抗策を用意されているようでした。 「激しい戦いですね。防壁魔法がなければ私は吹き飛ばされています」  私は闘技場を覆う防壁魔法を見つめました。  防壁魔法越しにもびりびりした空気を微かに感じます。  レベッカのチームは相乗効果を起こして魔力を高めているようでした。 「リオとルカはなかなか力を発揮できないようですね。仲間も援護してくれていますが」 「あ、一人脱落だ」  リオとルカのチームから一人脱落してしまいました。これで七対六。  なんとか態勢を立て直そうとしていますが、レベッカは好機を見逃しません。一気に畳みかけて二人目、三人目と戦闘不能にしていきました。  そしてとうとうリオとルカのチームは二人しかいなくなりました。もちろんリオとルカです。これで七対二。戦況はかなり厳しいものになります。  戦っているリオとルカは険しい顔をしていました。 「このまま決まりそうですね。レベッカが率いるチームの組織力には隙がありません」 「やっぱりレベッカのチームです! せんじゅつがすごいっておもってました!」  クロードは予想が的中して誇らしげです。  いい子いい子と撫でてあげるとクロードが私を見上げて嬉しそうにはにかみました。かわいらしいですね。 「にーさまもそうおもいますよね! ゆうしょうはレベッカにきまりです!」 「そうだね。ここから二人だけで七人を制圧するのは難しい。まずレベッカのチームはちょっとした軍隊レベルだ。学生にしとくのは勿体ないくらい。フツーに考えればレベッカのチームが勝つだろうね。フツーなら」 『フツーなら』ゼロスが意味深に言いました。  もしかしてと私はハッとする。  ゼロスがニヤリと笑いました。 「リオとルカは突然変異だ。もし僕がレベッカなら最優先で潰すよ」 「それならっ……」  私はごくりっと息を飲んで舞台を見つめます。  舞台にはレベッカのチーム七人とリオとルカ。ゼロスは最優先でリオとルカを脱落させるべきだったというのです。  レベッカをよく見ると焦っているように見えました。有利な状況にいるはずなのに決して攻撃の手を休めることはありません。  ドドドドドドドドドドドドドッ!!!!  リオとルカを激しい連続攻撃魔法が襲いました。  二人は防壁魔法を発動して防御していますが、攻撃の威力にじりじり追い詰められている。 「すごい攻撃ですね。防壁魔法で守られている観覧席まで衝撃波を感じます」 「レベッカは分かってるんだ。今仕留めとかないと面倒くさくなるってね」 「え? っ、わああ!」  リオとルカから凄まじい光が放たれました。  二人の反撃が始まったのです。  双子から膨大な魔力が放たれてレベッカチームの攻撃魔法を消し去っていく。 「な、なんだこの力はっ!?」 「あの双子、今までずっと力を抑えてたのか!?」 「いや、リオとルカが組んだからだ! 二人の魔力が合わさって倍増している!!」  観覧席が驚愕と興奮に盛り上がります。  それは大歓声となりましたが、すぐに様子が変わりました。 「お、おいっ。やばくないか?」 「防壁魔法に亀裂が入ってる……?」  ピシッ、ピシピシピシピシッ……!  今まで観覧席は教師と上級生の強力な防壁魔法で守られていました。  しかし防壁に亀裂が走ったのです。 「やばいっ、に、逃げろ!」 「防壁魔法が砕けるぞ!!」  観覧席はパニックになりました。  教師たちが生徒を避難させようとしますが間に合わない。  亀裂は瞬く間に深くなって、そして。  ――――パリーーーーン!!!!  防壁魔法が砕けました。  凄まじい衝撃波が観覧席を襲う。でも、ピタリッ。衝撃波が停止しました。  寸前、巨大な防壁魔法陣が闘技場に出現したのです。 「――――続けていいよ。あとは僕が守ってあげる」  ゼロスでした。  寸前でゼロスが闘技場全体を覆う防壁魔法陣を出現させたのです。  しかも椅子にゆったり座ったままで、戯れるような気軽さでした。面白い試合を見せてくれてるお礼だよ、と。ゼロスにとっては些細な力の発動なのでしょう。

ともだちにシェアしよう!