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近侍の仕事

それから、スウェインは宰相に付き従い、宰相府での会合にはどこへでも連れて行かれるようになった。 国内外の貴賓から有力者、一族の者達や配下への褒賞まで。 「シナラスの王子が、執政の勉強の為とはいえ我が近侍を望まれるなど、いやはや畏れ多いものです。」 雅やかな服を着て、色香を漂わせて宰相の側で控える。 気まぐれに体を触られ、机の下でペニスを咥えさせられ、不浄を飲み、ペンを差し出す。 サロンでは艶やかな服を着させられ、まるで、自分の物だと誇示するように紹介された。 これでシナラスの為に働けるなら…。 「シネラス国第五王子、スウェインでございます。尊敬する宰相様の元で施政について学んでおります。はい、大変貴重な経験をさせて頂いております。猊下におかれましても素晴らしい会合になられますよう、お祈り申し上げます。以後、どうぞお見知りおき下さいませ。」 たくさんの人と握手をし、肩を組まれ、酌をしてまわり、祖国の為にと笑顔を浮かべた。 そんな風にして3ヶ月も経ったか。 「来週、賓客がお見えになる。其方もだいぶ慣れた。滞在中のお世話を頼もうか。其方の待ち望んだ外交じゃ上手くやるがいい。」 「あ、ありがとうございます。」 これで、ようやく…。 スウェインは、シナラスの為に何が出来るかを、ずっと考えていた。 国の現状を訴え、支援を願うのだ。 シナラスとの橋渡しをして、良好な関係を築き、同盟を結び、少しでも早く国力の回復を…。 そして、いつかは…。 黒い感情がむくむくと湧き上がる。 虎の背中には、刃傷が無かった。 そこに、一太刀でも、貴方の、仇を…。 いや、今は考えるな、考えてはいけない。 その日着せられた服は、豪華だが普通の服だった。 袖を通すのが、久しぶりに感じた。 今回の貴賓とは、裕福な隣国の外務大臣らしい。 宰相に従って会談にも出席し、面識を得ることが出来た。 「シナラス国第五王子、スウェインと申します。宰相閣下の側で施政ついて学ばせて頂いております。 滞在中、ご案内役を仰せつかりました。どうぞ宜しくお願いします。」 折を見て、シナラスへの和平と援助を嘆願しなければ…。 晩餐の後、賓客の間へ案内する。 「本日は大変お疲れ様でございました。こちらでお寛ぎ下さいませ。 もしお疲れでなければ、この後、宰相様が個人的に一献如何かと仰せです。」 「おお、それは是非。どちらに伺おうか。」 「ご準備が出来ましたら、またお迎えにあがります。」 「左様か、頼もう。」 良かった、これで嘆願の時間もいただけよう。 ホッとして、宰相へ報告する。 「失礼致します。大臣殿が、是非にと。どちらへご用意致しますか?」 「ふん、ここでは流石に訝ろう。おお、そなたの部屋は大臣の隣。そこを借りよう。」 嫌な、予感がした。 「そうそう、其方も舞などお見せしてはいかがか。あれほど練習したのだ、きっとご満足頂けよう。さあ、美しく飾るのだ。」 舞…。 それは、何度も何度も、練習させられていた。 尻を突き出し、足を徐に上げ、腕をしなやかに振り、足をいっぱいに広げて、上目遣いで相手を見るような、舞。 まさか…、他国にまで私の恥辱を…。 宰相が手を振れば、心得た奴隷達がそれぞれトレイを差し出した。 軽やかな布と装飾品が乗っている。 「ふん、どれが良いか…、肌が白いから真珠も似合うが…、これが良かろう。紅珊瑚じゃ。さあ、早う服を脱げ。」 「そんな…、何故、こ、このような物を…、や、やめて下さい、わ、私は、こんな。」 簡素な服はすぐに取り払われて、衣装とも言えない飾りが着付けられてゆく。 全てに紅い珊瑚があしらわれていて、一目で高価だと分かる物だ。 そして、やはり体を隠す布が極端に少なかった。 「こ、これは…、舞で着るものではないのでは…。」 「もちろんそれに舞の衣装もつける。まあ、念の為だ。万が一、大臣から求められても、袖にするかどうかは其方の自由だ。さあ、仕上げよ。」 「そんな…。」 体を飾る布や髪飾り、宝石だけではない。 胸に付けられた飾りも、ペニスを際立たせる貴金属も、そして、後口に仕込まれたものまでも。 他国にまで、このような姿を…。 父の耳には、どうか…。 屈辱と羞恥に震える体を、侍従達が飾り立てて行くのを止める術も持たず、スウェインは大人しく化粧を施された。 いや、これで、国の為に何かできるのならば…。 最後に、布地の少ない衣装を、申し訳程度に着せられた。 身につけられる物を全て身に付け部屋に戻ると、既に酒会の準備がなされていた。 ここはその為の部屋なのだろうと、これからの『世話係』の意味をぼんやりと考える。 程なくして、大臣が入室した。 こちらを見て、ハッとしたのが分かった。 挨拶の間も、舐めるような視線が、肌を這う。 「王子は踊りが得意でしてな、遠くからお見えになられた大臣のご苦労を癒す為、舞をお見せしたいという事です。」 そんな事は一言も…。 「なんと、私の為にとは嬉しい事を。昼間とは印象がだいぶ違われる。楽しみでございます。」 国の、為…。 何も言えずに俯くスウェインをニヤリと見て、宰相が音楽を、と声を上げた。 深く礼をして、音楽に合わせて、教えられた通りに踊る。 動きやすい短い服が捲れて、卑猥な装飾をチラつかせる。 足を上げれば、殆ど隠す布のない股間が隙間から覗き、くるりと回れば、胸元の服がヒラヒラと靡く。 そして、その服の下。 感じる場所に付けられた飾りが、その重さを遺憾無く発揮した。 音楽が終われば、ニヤニヤとした大臣にこちらへと招かれ、お近付きの印にと、酒を飲まされた。 甘い…、そんな…。 「とても美しい舞でした。シナラスのご好意はしかと受け取りましたぞ、これではシナラスの為に一肌脱がねばなりますまい。いやはや、それにしても、美しい。」 汗で濡れた肩や背中を撫でられながら、誉めそやされる。 「あ、ありがとうございます。過分にお褒め頂き、誠に嬉しゅうございます。」 俯き加減で話してしまうのは仕方ない。 背筋を撫でる手が、何か目的を持っているのは確かだった。 口淫や手淫、腰の振り方から踊りまで仕込まれた理由を、スウェインは知った。 シナラスの為…。 スウェインはグッと唇を噛んだ。 「ところでスウェイン王子、シナラスの国は困窮なさっていると聞いた。何か支援など必要なものはございますか?」 パッと、スウェインの顔が上がった。 ああ…、これで国の役に! 「あ、ありがとうございます。シナラスは…。」 が、 「お待ち下さい。ここに私がおります。その話は貴国とシナラスの機密事項でございますから、私のいない所でなさいませ。」 「ああ失礼致しました宰相閣下。せっかくの酒席で無作法を。あまりにも美しいのでついつい。さあ、宰相閣下にもう一献。」 大臣が立ち上がると、宰相が、おや、と声を上げた。 「…ああ、…これは失礼。王子の踊りがあまりにも魅力的でしたから。」 大臣の股間が膨らんでいた。

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