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◇ 「……、ごめんイリヤ……」 「……許さない……、アンタのこと絶対許さない、」  後日、見事に風邪を移されたアタシは、彼に見舞いに来るからとしつこく連絡され、仕方なく家の住所を教えた。  しょんぼりと眉根を下げて謝る彼を見ていると少し可哀想な気持ちもあったが、彼が盛ってきたせいで風邪をうつされたのだから本当に反省して欲しい気持ちの方が強かった。 そんな気持ちを込めて大量にゼリーやらプリンやらを買わせて家に呼んだのだ。彼はスーパーの大きなレジ袋2袋分買ってきたらしく、それを見せびらかした後にベッドの前で土下座で謝罪している、そんな状況だ。 「ほんとにごめん……咳は出てないの?」 「熱は出たけど……咳はないわね……」 「そっか……、看病してあげよっか?」 彼はレジ袋から冷却シートを出し、体を拭く用のタオルを自らの鞄から出してそう言うのだった。 また盛られる、そんな予感を感じ全力で嫌だと否定した。 「えっ俺医学生だよ!?ちょっとは頼ってよぉ」 「……、え?……真面目にしてくれるの?」 「えっ?真面目にするよ……何、期待してたの?エッチな方」 「ッ……!してない!」 「そっかぁ、期待してもいいんだよ?」  ふふ、と口角を上げて笑みを零しながら首周りの汗をタオルで拭ってくる。冷却シートを取り出して、首筋に貼り付けた。突然来る冷気に驚き、少しだけ鳥肌が立った。 「熱上がってる時は首元とか腋の辺り冷やすといいんだって、ちょっと服……脱いでもらってもいい?」 「あら、ほんとにちゃんとしてくれるのね……?いーわよ、ほら……」  身体を起こして彼に言われるがまま、着ていた寝巻きのボタンを取って腕から抜き、上半身を露わにする。 腕を上げて腋を晒した途端、彼の目の色が変わった。 「なぁに……?どうしたの、礼央」 「……やばい待ってすごいムラムラしてきた、無理……エッチな方させて……俺のお注射、挿れさせて……ね、だめ?汗かいたらすぐ治るかもしれないし、ねぇ、前してくれたじゃん……俺にもエッチな看病させて……?」 真顔でとんでもないことを言い出した彼は、目を爛々と輝かせて、そのままベッドに上がってくる。両腕をベッドに押し付けられ、のしかかり腰を押し付けてくる彼に対して憤りを感じ、無我夢中で叫んでいた。  家には誰もいない。今は彼と自分だけ。だけど。 「っーー!!ここ実家よ!ほんと出ていって!!もうやだ!出ていって!!馬鹿!!変態!!このド変態!!」

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