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出会い ケンショー1
可愛い可愛い俺の番は、黒猫を契約精霊に持つ魔族だった。残念な事に魔族には番の概念はない。
だが、オレには分かる。狼だからな。
山狼族の、つまりはオレの縄張りにアスミイが入った瞬間、オレは今まで経験した事のない感情に見舞われたんだ。
「絶対に逃してはいけない存在が近くにいる」と。
遠くからでも分かる、こんなにいい匂いをさせやがって。
番以外の何者でもねぇだろうよ。
で、その気配の元に瞬間移動してみれば、めちゃくちゃ可愛い黒猫ちゃんがいたってわけだ。
正直見惚れた。
完全憑依をしていたから憑依を解くよう促す。だって最初は番の本来の姿を見たいし、愛でたい。完全憑依で繋がるのはその後のお楽しみだ。
憑依を解いたアスミは、それはもうものすごく可愛かった。細身の引き締まった体に黒髪のかわい子ちゃん。アーモンド型の眼も、気の強そうな眼差しも、何もかもがオレ好み。
そしてアスミから分離したミイを当たり前のように受け止め、速攻で繋がるリュー。全く、本能に忠実な精霊が羨ましい。
アスミはキャンキャン吠えているが、何を言っても可愛いだけだ。それに目を見れば分かる。お前もオレに一目惚れしたよな?
ごちゃごちゃうるせぇからとりあえずキスをして黙らせた。びっくりして少し開いていた前歯の隙間に、遠慮なく舌をねじ入れる。あぁ、甘いな。番の口内は今までに味わった事がないほど甘美だった。
アスミを強く抱きしめ頭を押さえ、逃げる舌を追いかけ無理矢理絡めて堪能する。アスミを喰らい尽くすかのように甘噛みし、吸い付き、上顎や歯茎も舐め尽くす。溢れて来たどちらの物とも分からない唾液を啜り飲み込むと、番の一部がオレの体に入って来た事実に全身の細胞が喜ぶのが分かる。
最初はガチガチに強張った体で抵抗していたアスミだが、オレが夢中で唇を貪っている間に、体の力がカクンと抜けた。
あぁ、腕にかかるアスミの重さが愛おしい・・・オレの腕の中で顔を赤らめ脱力しているアスミ・・・くそっ!こんな状況、我慢なんて出来るはずがない。
オレはアスミを抱きしめたまま瞬間移動する。もちろんリューとミイも一緒だ。この二匹はすでに完全に繋がっているようで羨ましい。アスミも本能のままオレを受け入れてくれたらいいのに・・・移動先は、この山の奥にある山狼族の長専用のツリーハウス。
つまりオレが連れ込まない限り、誰も入る事が出来ない場所。他の山狼族であっても魔法で弾かれるようになっている。
まぁ、かなり高い木の上にあるので、契約精霊を持たない者は物理的にも登っては来れないのだが。
今ではもう六人しかいない山狼族だが、昔は総勢で何百人もいる部族だった。狩猟で生計を立てる山狼族は、一箇所に定住せず山から山へ渡り住んでいた。だが、定期的に拠点としていた場所も数カ所ある。今現在定住している山峡もその一つだ。
通常の住処はしっかりとした天幕で、折りたたむと持ち運びが出来る。だが、ここ数年は他の山へは移動していないので、設置しっぱなしになっている。
そして、この場所には歴代の長のプライベートスペースとなっていたツリーハウスがある。それがしばらく定住する場所の決め手となったんだが・・・正解だったな。
アスミを連れ込む場所は少しでも近い方がいい。瞬間移動でも場所が遠いほど時間がかかる。今は一秒だって速く二人と契約精霊二匹だけになりたい。
突然の瞬間移動に目を丸くするアスミ。
「へっ?ここどこ??」
「心配しなくてもさっきと同じ山だ。木の上にあるここには誰も来ねぇし、来たとしても入れねぇから・・・なぁ、アスミ、オレ我慢出来ねぇわ。抱いていいか?はは、正直番の威力舐めてたわ・・・」
オレはアスミの頬を撫でつつ、しっかりと目を見て言う。
「はぁっ?!いやいやいや、初対面で何言ってんの??ダメに決まってんだろっ!!」
そう言ってオレから離れようとするアスミを、逃すまいと更に引き寄せ、もう一度キスをする。
深く深く・・・さっきよりも丁寧に・・・オレの思いが伝わるように・・・
「・・・ん、んんんっ!!」
アスミは抵抗しようと身を捩るが、さっきと同様にだんだんと体の力が抜けていく。そんなアスミを抱きかかえ、そっとベッドの上に下ろした。
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