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番外編 元祖破天荒と新破天荒 1

 今日は、トワとリュウセイとルイが山に遊びに来る日。 山狼族の集落に入れる事は出来ないが、山峡の川辺でお弁当を食べて、そこから集落の手前までの道のりをハイキング気分で楽しむんだ。 参加するメンバーは、山狼族は俺とケンショーさんにシーナさんとシーアさん。 魔族の国から来るのは、魔族のルイ、人族のトワ、ドラゴン族のリュウセイと多国籍な感じ。 もちろんショウも来たがったけど、ちょっとしたトラブルがあり、次代魔王候補の二人が揃って魔王城を離れるわけにはいかなくなってしまったようだ。 シーアさんは、リュウセイとトワのドラゴン×オオヤマネコのカプを見れると大はしゃぎ。「虎×ジャガー(ショウ×ルイ)も見たかったけど我慢するわぁ」だって。ほんとブレないよな。 そして、シーナさんが参加してるんだよっ! 俺、頑張ったんだ。 ミイを餌に近づいて、色々話しかけたりしてさ。当然嫌な顔をされるも、めげずに話しかけ続けたら、一番興味を示してくれたのが魔族の契約精霊の話。 すっげー分かりにくいんだけど、ちょっとだけ耳がピクッて動くんだよ。ゴールデンレトリバーだからかな。 どうやら、猫以外の猫科動物の精霊に興味があるみたい。しかも大型猛獣ではなく、カラカルやオオヤマネコみたいな猫よりちょっと大きいやつに。 で、今回のハイキングに「トワが来るからオオヤマネコの精霊も来ますよ」ってダメもとで誘ったら、めちゃめちゃ小さな声で「・・・行く」って言ったんだよ! 俺が言うのもなんだけど、ツンデレシーナさん可愛い!  と、いうわけで、今は俺が最初にケンショーさんに出会った山峡の川辺で、俺とケンショーさん、シーナさん、シーアさんとその契約精霊たちが、トワとリュウセイ、ルイと契約精霊たちを待ってるっていう状況だ。 リュウセイとルイは瞬間移動が出来るけど、瞬間移動では一度行った事のある場所にしか行けない。初めて訪れるこの川辺には、憑依して飛んで来るとのことだ。 「ドラゴンに会えるの楽しみだわぁ。しかも番がオオヤマネコなんてぇ!オオヤマネコちゃん、ドラゴンを受け入れて大丈夫なのかしらぁ・・・?」 シーアさん・・・俺は極力ドラゴン×オオヤマネコを想像しないようにしてたのに・・・まぁ、リュウセイのトワへの溺愛も、ヤヤからリンクへの溺愛もかなりのもんだから、無体を強いる事はないと思うんだけど・・・実際はどうなのかな? ドラゴンを受け入れるオオヤマネコ・・・うーん、狼×猫より大変そう。  シーアさんとそんな会話をしているうちに、三体の影が遠方から近づいて来る。 手を振って「ここだよ!」とアピールする俺。次第に影が大きくなって、トワとリュウセイ、ルイが川辺に降り立った。 「「お待たせ!」」 トワとルイの声が揃い、三人から契約精霊が飛び出す。オオヤマネコのリンク、ジャガーのベル、倶利伽羅龍王のヤヤだ。 それぞれ自己紹介をし合う。 シーアさん!目が怖いからっ! 「だってぇ、ドラゴンよ!ヤヤちゃんてすごく立派なドラゴンじゃなぁい。で、リンクちゃんはミイちゃんよりは大きいけどぉ、大丈夫なのかなってぇ・・・」 もういいから黙って!! シーアさんの事は放っておいて、とりあえずみんなでお弁当を食べる事になった。 「これ、ウチの母に作ってもらったんです。みなさんでどうぞ」 ルイが差し出したお弁当は、見事な洋風行楽弁当だ。カップに入ったグラタンや、エビのカクテルサラダ、色々なフライ、ゆで卵入りミートローフ、野菜のマリネ、キッシュなどが綺麗に詰め込まれている。それに、すごい量のおにぎり!! うっ、美味そうっ!!  実はこの世界の食事事情は、現代日本の洋食がスタンダードなんだ。ハンバーグにライス的なやつ。和食や中華は家庭ではあまり作らず、お店に行って食べる感じだ。 そして何故かお弁当文化がある。もちろんおにぎりも。 その辺はASURA先生のこだわりだったらしい。 ルイママさんは前世でおしゃれなカフェを営んでいて、めちゃくちゃ美味しいランチを俺もよく食べに行ってたんだけど・・・何とこっちでもカフェ的なお店をやってるんだ。 そのお店、マジョリカには、こっちの王妃アスラ様が書いた小説も置いてあるらしくて、実は今一番行きたい場所なんだよね。 かなり前にトワにマジョリカの事を教えてもらって、誘われてたんだけど、次代魔王候補様の実家だって聞いて恐れ多くてさ。その次代魔王候補様(ルイ)も来そうだったし。 トワは前世の記憶を思い出すのが早かったから、結構前からこっちでもルイと友だちだったけど、俺はただの一般市民だしさ。前世の記憶が戻ってなかった時には行きづらかったんだよね。  けど、今度トワとルイと一緒にマジョリカへ行く約束をしてるんだ。何と、アスラ様も来られるらしい!あーめちゃくちゃ楽しみ。 「すげぇ、ヤバいくらい美味いな」 「ホント美味しいわぁ。しかもおしゃれだしぃ。こんなの山狼族では作れないからぁ、今日は来て良かったわぁ」 「・・・美味しい」 うんうん、山狼族の食事は基本自給自足で、狩って来た肉を捌いてバーベキュー的なのが定番だもんね。畑で育てた野菜も山菜も焼くかスープにするか、って感じだし。美味しいんだけどわりと豪快なんだ。 けど、石窯があるからパンを焼いたり、ピザみたいなのを作ったりもする。 今日は、フォカッチャ的なパンとサンドイッチを、シーナさんとシーアさんと一緒に作って持って来た。  トワもリュウセイもルイも美味しいって言ってくれてホッとしたよ。 ルイママのお弁当はちょっとしたカルチャーショックだったみたいだけど、山狼族のみんなもすごく喜んでたし良かった! しかもデザートもたっぷり。ルイママ特製のマカロンやクッキーを、山狼族も魔族も人族もドラゴン族も精霊も、みんな大喜びで食べたんだ。  大満足のお弁当タイムが終了し、さぁこれから集落の近くまでハイキングだ!って時に、俺たちの前に四つの影が現れた・・・ えっ?瞬間移動で誰か来た?!

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