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(まぁ、そんなこんなで今だけど……) あれからえげつなく一ノ瀬を困らせてきた自覚がある。 移動教室のとき教材全部持たせたり、わざと昼の売店買いに行かせて「やっぱ要らない」って言ったり、待つ約束だったのに勝手に帰ったり…… 目だって合わせてないし、会話もろくにしてない。 なのに、現在絶賛2ヶ月目を過ぎそうなところ。 1ヶ月も経たず終わると思ったのに謎すぎ…… 今だって、結局連れてこられたCDショップでチラリと隣を盗み見た。 (こいつも案外根性あるなぁ) こんな僕を笑って受け入れ、且つ他の奴らにフォローまでしてくれてて。 ほんっと腹たつくらい人間できててムカつく。何なの? 良いとこしかないじゃんキモい。 しかも全然好きでもない僕に優しくして、嫌味しか言われないの分かってて話しかけてきて……実は結構M? 怖いんだけど。 「杠葉何見てんの?」 「……別に」 「お!それ気になるのか? 俺そのバンドめちゃくちゃ好き、曲も歌詞もいいんだよな」 何気なく持ってた、聴いたことないCD。 それをパッと取られそのままレジに持っていかれる。 「は? ちょ、何してんのっ?」 「今日付き合ってくれたお礼。 お前あんまこのバンド知らなそうだし、買ってやるからよかったら聴いてみて」 「オススメは4番と13番な」と笑いながら袋を手渡された。 (っ、くそ、こういうところだよ) ねぇ、これ素でやってるの? それとも作戦? こんなことされると余計胸が痛くなってしょうがない。 「……なにこれ、迷惑なんだけど」 「あ、あぁーそうだよな悪い。要らなかったら捨てていいから」 「そうする」 ーーわけ、無いじゃん。 嘘ばっか。本当、嘘ばっか。 「じゃ、帰るか」と白けた空気を無くすように歩き出した背中を見ながら。 隠れるようにそっと、買ってもらったCDを鞄の奥へ大切にしまった。

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